贈り物





何かを贈りたいと思った。






でも何を贈ったら彼女が喜ぶのかなんて全然分かんなくて。

彼女のことを全然知らなかったんだと気付いた。
出会って、好きになってからそれなりに経つというのに。



けれど彼女は好きなものが多くて、あれが好き、これが好き、どれも好きだと言う。




一番好きなものは、彼女に存在するんだろうか?





そんなことを考えながら、結局僕は花を手に取った。

真っ赤なバラの花。



女性に贈る定番だといっても間違いじゃないと思う。





僕は真っ赤なバラと、ピンクや黄色の色とりどりの名前も知らない花で束を作った。





花束を持って町を歩くのは想像以上になんか照れ臭くて、
すれ違う人が驚いたり面白そうに俺を見ていく。

恥ずかしくて仕方なかった僕は花束を後ろに隠して歩いた。





(こんなので喜んでくれるのかな…)



優しい彼女だから受け取ってくれると思う。

けれど僕が望んでいるのは、彼女が喜んでくれること。

“生きる”ことに希望を持たせてくれた彼女に、何も持たない僕だけど何かしたくて。






彼女の部屋の前で一呼吸。
相変わらず花束は後ろに持って、コンコンとノックをする。




「こんにちは、スザク。おかえりなさい!」




出てきた彼女はいつものようににっこり微笑んで出迎えてくれた。
どうぞ、と部屋に通されたと同時に後ろにあったものを差し出す。


「!」


「受け取ってください!」


「わたしに?」



目を真ん丸にして問うてくる彼女に僕は一度頷いて俯いた。



「…ありきたりなものでごめん。ユフィの好きなもの全然分からなくて」


「…ううん、ありがとうスザク。すごく嬉しいです」



ふわり、と手が軽くなる。
顔を上げると、僕の花束を大事そうに抱える彼女が目に入った。



「きれいなバラですね!
チューリップやフリージア、かすみ草…。ふふ、いろんなお花がいっぱい!」



嬉しそうに笑った彼女に、ホッと胸を撫で下ろす。


良かった、喜んでもらえた。



「わたし、男性から花束を貰うなんて初めてです!嬉しくて、でもちょっと照れますね」


肩を竦めながらも嬉しそうに笑う彼女。
きっと僕も同じように笑ってる。















「あ、ねぇ、ユフィ。ユフィの一番好きなものってなに?」


「一番好きなもの…?そんなのたくさんありすぎて決められませ〜ん!


…あ、でも…」


「?」


「一番好きな人なら、スザク、貴方です!」


「!」






一番好きな人から貰えるものなら、なんだって嬉しいんですよ!!




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