意地悪 広い広い宮殿の整えられた庭は、俺とユフィ、ナナリーのお気に入りの場所で、俺達は時間を見つけては好きなものを持ち込んで遊びに行ってた。 俺は難しい本を読むのが好きで、重い本を何冊も、時間が経つのも忘れていつも読みふけっていた。 ポスン、と背中に体重がかかる。 それはユフィがするいつもの行為だったから、俺は気にも止めず本をめくる手を休めない。 「ルルーシュ?」 「……」 ペラリ、ペラリとページをめくる音だけがやけに大きく耳に届く。 「ルルーシュってば?」 ぐっと、ユフィにさらに体重をかけられ、俺は少し前のめりになった。 「…ルルーシュー」 「……」 ふわっと、背中にあった重みがなくなって、ボソッとユフィが呟く。 「…ルルーシュの読書ばか。意地悪だわ」 明らかに沈んでいるその声色に俺はチクリと胸に痛みを覚え、彼女の名前を慌てて紡ごうとした。 「ユ…」 「もぉ知らない。大嫌いなんだからねっ」 「えっ!?」 俺はユフィが言った言葉の衝撃で、重ねていた本を崩してしまった。 「ユフィ……っ!」 立ち上がった彼女の手を、焦って掴む。 「ルルーシュ」 ユフィはにっこり微笑む。 「嘘です。 わたしがルルーシュを嫌いになるなんてあるわけないじゃない」 「………え」 クスクス笑うユフィに、俺は全身の力が抜けていく様な感じがして、彼女の肩に頭を預けた。 「…酷いな、ユフィ」 心底そう思う。 だって、たとえ嘘だとしても、君の口から「嫌い」なんて聞きたくなかったから。 「君のほうがずっと意地悪だ」 「ふふふ。そうね…ごめんなさい、ルルーシュ」 ユフィはゆっくりと俺の頭を撫でた。 その優しさに俺は、心から息をはく。 「…頼むから、もう“嫌い”だと言うなよ?」 「はい」 ―初めて恋をした君は、いとも簡単に俺の世界に侵入する。 ▲|▽ |