桜色 桜が咲いていた。 あの花を見ると、心が軋む。 『ユフィの髪は桜みたいだね』 『サクラ?…ああ、チェリーブロッサムのことですね?』 『うん。ピンク色がよく似てるなって思ったんだ。すごく綺麗だね』 『ふふ、ありがとう。スザク』 懐かしく、暖かく、切なく甘い思い出。 彼女を思い出なんかにしたくなかったのに… 彼女を過去になんて、したくなかったのに… いつの間にか、俺は彼女を“思い出す”ようになってしまった。 彼女が恋しくなって、目を閉じた。 暗闇のその先に、幸せだった『僕』がいる。 彼女に微笑んで、笑い合う幸せな二人。 ユフィは、忘れない。 何があったって、俺はユフィの姿も表情も声も命も、最期もこの胸に刻んで歩き続ける。 目を開いたら、光がさしこんだ。 でもそこに、俺の幸せはない。 △|▽ |