甘いかおり、苦い味
「ありがとう」
ふわふわ、空間をさ迷う彼女の手を取ったときふんわりと花の香りがした。
薄い青色の瞳がゆっくり細められ、鈴のような声で僕に伝える。
―トクン、
気のせいだろうか?
胸が高鳴った気がした。
彼女から瞳を外せない。
―これはザフトの船ではありませんのね?
(コーディネイターのくせに馴れ馴れしくしないで!!)
ズキン、ズキン、
彼女に向けられた棘は、何故か僕の心にも深く刺さり、唇を噛み締めて俯いた。
(彼女はたった一人の同胞)
(そして、浮いたその存在はまるで僕を映しているよう)