過去よりも



披露宴会場を見学に来たラクスは感慨深げに呟いた。


「知り合ってからあっという間ですね。
いろんなことが、ついこの前のようです」


彼女の後ろにいたアスランは、苦笑する。


「もしかしてマリッジブルーか?本当に俺で良いのか不安になった?」


ラクスは振り返り、首を振る。


「あの日に言ってくれたでしょう?
やってみなければそこに答えがあるかどうか分からない。もし、そこに答えがなくても、また別の問題をみつければいい、と。
あの言葉があったから今こうして二人で立っているのだと思うのです。
あんなに泣いたことや辛かったこと。
今こうして思い出として話せるようになるんだから、時間が過ぎるのはあっという間ですわ」


微笑みながらそう告げたラクスは、迷ったように言葉を発する。


「…まだ、一度も聞いたことがないですよね。
あの日なんで泣いたか。
……聞かないのですか?」


―あの日、初恋を失った痛みに涙した日。

今でもラクスの胸に強く残っている。


ラクスの言葉を受けて、アスランは穏やかな笑みを浮かべて頷いた。


「ああ、良いんだ。
俺の知らないラクスがいたから、今のラクスがいる。そういうとこ、全部引っくるめてラクスが好きなんだ。
俺はこれからのことのほうがずっと大事だと思う。
これまでの別々の過去より、これから二人で過ごす時間を大切にしていきたいから」

「…アスラン」


彼の言葉に目を見開いたラクスは、嬉しそうに涙を浮かべ、頷いた。



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