変えられなかった痛み



「あーあ、なにしてんだろう、僕」

星達が夜空に輝き、僕を見下ろしている。
溜め息と共に、呆れたような声が出た。

“キラは何も分かってません。…分かってません!”

一番辛い記憶をやり直しに過去に戻ってきたのに、結局同じことを繰り返した。
やり直すことが出来なかった。

道に座り込んで、ずっと握りしめていた指輪を見る。
給料3ヶ月分とはいかなかったけど、どうしても買いたくなって初任給全額で勝負をかけた婚約指輪。
サイズをきかれて、ラクスの指に入らないのは嫌だったから、一番大きいのを頼んだ。

それを僕の薬指にはめてみる。

「…僕の指でもブカブカだ」

呆れて、笑いが込み上げる。


彼女の指にはめられることのない指輪。
こんなに想いを詰め込んであるのに。

「はは…っ…う…」

嗚咽が漏れる。
悲しくて苦しくて心が壊れそうになった。

過去に戻ってくる度に無我夢中でラクスを想って走ってきた。それが正しいのかも分からず。
ラクスを忘れようとしても、逆に彼女への想いの強さ、深さを知った。
忘れるなんて出来ない、諦めるなんて嫌だ。


“どうして、今更そんなことを言うのですか”
だけど
“やっぱりキラは何も分かってないです…。分かってないですよ…っ”

どうしても、彼女に振り向いてもらえない。


フラフラと歩き始めて、レストランの窓側の席に僕が世界で一番好きな女の子と、世界で一番羨ましい人が並んで座っていたを見つけた。

カメラのシャッターが二人に向いている。

僕には二人の背中しか見えないけど、今撮ろうとしている写真はすでに知っている。


「これが最後か…」


スライドショーの写真はこれが最後。
過去のやり直しもこれで最後。



結局、何も変えられなかった。





僕は静かに目を閉じた。




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