誰かを悲しませても



 
「ラクス!!」


乱暴にラクスの名前を叫ぶと、ラクスは驚いた様子で振り返り、
アスランさんはハッとしたように目を見開いて、言葉を詰まらせた。


「ど…しましたの?びっくりしました」


ラクスは困った様に笑う。


―間に合った…!

ホッとして、僕はラクスから…
いや、アスランさんから目を反らした。


―どうして、運命はこんなにしょっぱく出来てるんだろう。
誰かが幸せになろうとすると、誰かが悲しまなきゃいけなくなる。

アスランさんは目に焦りの色を滲ませ、力なく笑う。
僕が告白の邪魔をしたから。


「花、火…僕も運ぶって言ったでしょ」


息を切らしながら、準備室に立ち入る。
ラクスは呆れたように笑う。


「まあ、一人で大丈夫だと言いましたのに」

「うん」


でも、今日、ラクスを一人にしたくなかった。
アスランさんの近くに、いてほしくなかった。


告白なんか、されないでほしいから。




―誰かを悲しませてでも、譲れない想いが“今の僕”にはある。



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