アンフェア



 




向けられた銃口から銃弾が放たれた。


渇いた破裂音と、切なく掠れた叫び声が同時に耳に届いたと思ったら、左胸に鈍い痛みを受けて、僕は螺旋状の階段から落ちた。


「っキラ!!!」


僕を撃った人間、ラクスが僕に駆け寄り、僕の頭を抱き上げる。


「…どうしてっ…?
貴方は…貴方はバカです…!!」


常にポーカーフェイスを気取る彼女が悲しげに顔を歪め、蒼い瞳から涙をポロポロ流す。

彼女の涙は僕の頬へ、
僕の左胸から溢れる血は彼女のスーツにそれぞれ伝う。


僕を抱き締めるこの人を、僕は怨んでいた。
僕の弟みたいな存在を殺したから。

僕を撃ったこの場所で、僕と同じ様に、一発の銃弾で。

だから、僕は彼女を殺すつもりで、近付いた。

何も知らないふりを、彼女を慕うふりをした。
僕を信用させて、油断させて、裏切って殺すつもりだった。


「…これ、で……良っいんだ…」


だけど、いつの間にか、自分でも不思議なくらいに、この人に惹かれてしまった。


「…ラ、クス…これで良い…んだ…っ」

「キラっ!」


彼女を愛してしまった。

あんなに憎くて、殺したくてしかたなかった女だったのに、愛しくて仕方ない。


「………っキラ…!」


僕は彼女を殺せない代わりに、彼女に僕を殺させた。




…これで良い。

これで僕は彼女のなかで永遠になれる。



「…貴方はっ、バカです!!」



切ない叫び声を聴きながら、僕は永遠の眠りに就く。





 


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