怪盗
キラ・ヤマトは今日も不機嫌だった。
親友のアスランが理由を尋ねると「またか」と聞き飽きた返事が返ってくる。
「あの怪盗に逃げられた!!!」
――あの怪盗、とは今最も世間を騒がせている、怪盗セイントテールのこと。
キラの父親は、怪盗セイントテールを追う刑事であり、将来父親のような刑事になりたいと夢を見るキラは「将来のため」と言って、父親の現場へ引っ付いていた。
「いい加減、諦めたらいかがです?」
苦笑混じりの声がして、キラとアスランは同時に振り返った。
そこには、彼らのクラスメイトであり、アスランの幼なじみであるラクス・クラインが立っている。
「というかキラ。もうおじ様に付いて現場に行くのお止めになったほうが良いんじゃないんですか?
いくら、刑事の息子で、将来刑事を目指してるからって…」
ラクスはやんわりとキラに忠告する。
が
「嫌だ!!
僕は将来優秀な刑事になるんだから、あんなコソドロくらい捕まえられる様にならなきゃ!
それに現場のイロハだって知っておきたいしねっ」
キラはラクスの忠告に首をブンブン横に振り、意気込んだ。
「みてろよ、怪盗セイントテール!!
次こそは絶対捕まえてやるー!!!」
学園中に、キラの叫びが木霊する。
(…まったく…キラったら…毎回わたくしの邪魔なんだから…!)
両耳を塞いで、ラクスは深々と溜め息をついた。