がんばるひと(良ハナ) ひんやり、 ズキズキ痛む背中にシップがいくつも貼られる。 「これでよしっ。」 にっこり微笑んで、ハナはポンッと横になっている良太郎の背中を叩いた。 「あいたたっ」 「わ、ごめん!力、強すぎた?」 「少し…」 苦笑いしながら起き上がって、良太郎はTシャツを着る。 少し動いただけで、湿布特有のツンとした匂いが鼻を掠めた。 「もう。良太郎は体力がないんだから、無理しちゃだめだよ」 彼の隣に座って、ハナは口を尖らせる。 “体力がない”とキッパリ言ってしまうのがハナらしいなぁ、と思いつつ 良太郎は「これでも前より体力がついたんだよ」とほわほわ笑う。 そんな良太郎にハナは軽く溜め息を溢した。 以前に比べると、確かに彼は体力が付いたような気がする。 気がするが、ついさっき彼はハナに黙ってトレーニング(腕立て伏せ)をしていたところ、途中で体力が底をついて動けなくなっていたのだ(聞けば、10回手前で力尽きたらしい)。 電ライナーで、良太郎が来ないことに心配したハナが良太郎を発見するまでずっと。 倒れていた彼を見たとき、ハナは一瞬心臓が止まってしまうくらいに驚いたものだ。 「心配させてごめんね。 でも、頑張らないと」 「…ね、良太郎。どうしてそんなに頑張るの?戦うのはあなたじゃ」 ないのに、というハナの言葉を遮って良太郎は告げる。 「強くなりたいんだ。モモタロス達の力に頼ってばかりじゃなくて、自分自身を強くしたい」 良太郎の瞳は真っ直ぐにハナを捉える。 (たぶん、ハナさんは覚えてないんだろうな) あの時、ぼくが言ったこと。 ―本当は、ぼくが守らなくちゃいけないのに。 ぼくは男で、ハナさんは女の子で。 ぼくはいつもハナさんに守られてばかり。 それは、違うっていつも思っていた。 「……良太郎?」 真っ直ぐ自分を見たままの良太郎に、ハナは首を傾げる。 良太郎は微笑んだ。 「ぼくの手で、守りたいから」 こうして当たり前のように、隣にいてくれて、ぼくを見守ってくれる人を―…。 「だからハナさん。 またシップ貼りお願いして良いかな」 「……いいよ」 良太郎は一度決めたことは絶対に曲げない意思の強い人間だとハナは知っている。 だから彼女は諦めたように頷いた。 「ありがとう、ハナさん」 そんなハナに、良太郎は満面の笑みを浮かべた。 |