幸せと隣り
休日、彼氏の家に遊びに来ていたのだけど密室に耐えられなくて近くの公園に散歩に来ていた。付き合い始めて一年経ったのに未だに彼といるのは緊張する。
「なぁ、寒くない?なんで外に出ようと思ったの?」
「うっ、えと、外の空気吸いたかったから?えへへ。」
秋も終わりに近づきトンボが空を飛び回る中、だんだん陽が沈んでいく。紅葉も終わりに近づいているのか木にはもうほとんど木の葉は残っていなかった。
「そろそろ家戻ろ?夕飯の支度しなきゃ。」
「あ、うん。わかった。」
****
今日は何回目かのお泊りの日。彼は親元を離れてアパートに一人暮らし。私も一人暮らしだけど、彼の方が家事ができる。夕飯美味しかったし。
「お風呂先どうぞ。」
「は、はい!あ、ありがとう。」
洗面道具を持って、立ち上がると、不意に抱き締められた。心臓!出る!
「目、閉じて。」
「ん!だだだだ、ダメ!」
彼の腕を振り解いて風呂場に逃げ込んだ。死ぬ!死ぬかと思った!
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「お、お風呂ありがと。…さっきはごめん。」
「いや、俺も悪かったよ、ごめんな。」
乾かしていない髪の毛から雫が頬に伝う。それを彼が、私の頭にかかっていたタオルで拭い取った。そのままタオルで頭をわしわしされ、額に唇が落とされた。
「へっ??!」
「にしし、スキあり。髪、乾かしておけよ?風邪引くぞ?」
「う、うん。」
不意打ちいいい!もう!しかもそんなはにかんだ笑顔!ずるいよ。どんどん好きになる。髪を乾かしてテレビを見てるうちにうたた寝してしまっていたらしい。いつから彼が隣にいたのかわからない。彼は既に髪の毛を乾かしたあとで、本を読んでいた。
「ん?起きた?疲れたならもう寝る?」
「え!いや大丈夫だよ!疲れてない。ただ、」
ほら、今日はその、えーと、何ていうか、えーと、…やっぱ無理!言えない!今日が付き合って一年目の記念日だなんて!
「…な、何でもない。」
「何言ってんの、なんでもなくないでしょ。」
うひゃー近い近い!顔近い!恥ずかしい!心音聞こえちゃうよ!
「もしかして、今日のこと?俺が何の日か忘れてるって思ってる?」
「お、覚えてたの?!」
誕生日でもないただの日なんて覚えていないと思っていた為、驚いて目を見開いてパチくりとさせた。
「ひどいなぁ、これでも俺からコクったんだし覚えてるよ。だから今日誘ったっていうのもあるんだけどね。」
嬉しい、覚えていてくれて。私だけが好きなわけじゃないのが実感できる。両想いっていいな。
「…ねぇ、今の顔すごく可愛い。」
「へ?ちょ、え?!」
抱き寄せられきつく、でも苦しくないように耳を胸に押し当てるように抱き締められた。ああ、心音が聞こえる。トクントクントクンて少し小走りしてるような速さで。
「それで?記念日記念に何する?」
なななななな何、する?それって、…
「え、えと…何ていうか一緒に居られたらそれでいいなぁって…」
うん、ほんとイチャイチャしたいとか思ってない訳じゃないけど。
「そっか、俺はお前の全部が欲しいけどな。緊張してる顔も驚いてる顔も照れてる顔も好きだよ。」
嬉しい恥ずかしい緊張してきたもういろんな感情でいっぱいだよ。手で口元を押さえながら今にも溢れ出してきそうな涙をぐっと我慢して大きく頷いた。
「私も好き。」
だから、私だってあなたがほしいと…心から思う。言葉に出すのは…
「うん、じゃあほら、言ってみて? 「俺が欲しい」って。」
…もう、あなたの顔、見ていられないくらいに恥ずかしい。
12・11位「言えよ、俺が欲しいって」「お前の全部が欲しい」
女が男に言われたい言葉ランキングBEST12!より
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