女の子 | ナノ
何かいつも見られてる

あ、ほらまた。
私に気づかれていないと思ってこっちを見てる。
電柱に隠れながら、こっちを見てる。

「はぁ。」

今日はやけに冷えるなぁ。
首に巻き付けたマフラーを口元まであげた。
雲に覆われた空を見上げ、学校へと歩んだ。


****


あぁまた。
今度は教室の扉の隙間から、こっちを見てる。
あれ、でもさっきの人と違う。
まぁどっちにしろ無視しなきゃ。

「(何か英文)」

…お腹減ったぁ。
今日のお弁当、おかず何かなぁ。
腹の虫が鳴いているが、周りには聞こえていないようだ。
聞こえたってもいい。みんなだってお腹空いてるはずだし。


****


今日はいつもよりおかずの種類が少なかったな。
お昼休みはいつも友達と中庭で食べている。
今日は雨が降ってきてしまって中庭では食べられなかった。

「ねぇねぇ、確か午後の授業最初体育じゃなかったけ?」

「…うん、そうだね。」

食事をしてすぐは動きたくない。
30分は休憩が欲しい。ほんと。

「更衣室行ってもう着替えちゃお!そんで、バレーして遊んでよう?」

友達はバレー部に所属している。
とても上手だ。

「私ブランクあるからあまりできないよ?いいの?」

「いいのいいの、遊びなんだから!ね!」

明るいいい子なんだ。とても。
彼女といるときだけ視線を感じない。
だから彼女の傍はとても安心できる。

「うん、じゃあやろっか。」


****


更衣室に向かう途中で忘れ物をして一人で教室に戻るとまた、見られてる。
忘れていたものをしっかり持ち、急いで彼女のいる更衣室へ向かった。

「あれ、もう着替え終わっちゃった?」

更衣室までの道のりで彼女に出会った。

「うん、それで体育倉庫開けようと思ったら鍵閉まっててこれから職員室に鍵借りに行くとこだよ。」

「そ、そうなんだ。ありがとう。」

あ、ヤバい、また、更衣室で一人になったら、…。

「わ、私もついて行く。」

「いいよいいよ、気にしないで!それより着替えて待ってて?ね?」

じゃあ行ってくるね、と彼女はどんどん遠ざかって行ってしまった。
追うわけにもいかず、仕方なく更衣室に向かうことにした。
さっさと着替えて、体育館で待ってれば大丈夫かもしれない。


****


更衣室に入って制服から体操服に着替えていると、また、見られてる。
これは、どうしたらいいのだろう。
悲鳴をあげるべき?
半ば着替えは終わっているわけだから、叫ぶのもなぁ。
長袖を羽織って携帯をいじりながら部屋から出ようにも出れずにいると、廊下からにぎやかな声がしてきた。
みんな、着替えに来たのかな。
声に気が散っていたせいかもう視線は感じなくなっていた。

「おーい、あ、いた。」

「…私?」

クラスメイト達がぞろぞろと入ってくる中、短髪の子に声をかけられた。
あまり話したことのない子だ。

「そうそう、下で”早くバレーしよーよ!”って叫んでたよ?」

「あ、ありがとう。」

忘れていたわけじゃないのに悪い事した気になった。
部屋から出られなかったのだからなんて言い訳は誰にも言わない。言えない。


****


放課後、彼女はバイトがあるからと言って満面の笑みを残して帰って行った。
私も用があるわけではないため急いで学校を飛び出した。
下校道中の電柱の少ないところは薄暗さが一層に増し、怖さを覚える。
あぁ、こんなところで、人も少ないからって、私は気づいているんだよ。
こっち見てるでしょ。
なんで私のこと見るの?私が見てるの?
そうだよね、みんなには、見えてないんだから。

「…こんばんは、今日はどういったご用件で?」

電柱に隠れていたその人に、声を、かけた。
陽が沈んでからの私の仕事。

『あんた、やっぱり見えてるんだな。』

何なら私が相談にのりますよ?夜限定で。




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