女の子 | ナノ
文化祭(^^)

「じゃーねー」

「うん、またね!」

放課後、教室。
早々と帰宅していく友達を見送りながら荷物をまとめる。
10月になり日もだいぶ短くなってきた。
夕日が差し込む教室には私を合わせて残る数人になっていた。
荷物をまとめ終え立ち上がろうとして椅子を引こうとしたが、重くて引けなかった。
驚いて後ろを振り向くとそこには椅子を抑えるように人が立っていた。

「よう、橘。」

「うん、どいてくれるかな。冨樫くん」

ニコニコしながらどこうとしない彼を見上げキッと睨みをきかせ微笑んだ。
彼は「おお怖っ」なんて心にもないことをいいながら机の横に立った。

「…何か用?」

立ち上がりながら30cmくらい高い彼の顔を見つめた。

「そう、あの漫画の新刊出た?」

「まだだけど。」

残念そうにする彼は幼い子供のようだ。

「…それだけ?」

漫画の新刊が出たか否かの確認だけで話し掛けたのだろうか。
出たら貸すよって言ってるのに。

「なんか冷たくね?まぁいいけど。」

彼はじゃあね、と手を振りながら教室を出て行った。
置いてけぼりにされた私も少し遅れて教室を後にした。


****


…あれ?
ああ、そうか明日学園祭か。
家に帰り、カレンダーを見て気がついたが、明日は学園祭が行われる。
カレンダーを見る前に地元の友達から学園祭の詳細を聞かれて気が付いたのだが細かい事は気にしない。
自分から誘っておいて忘れるところだった。
スマホに届いたラインに返信をし、パソコンを開いた。


****


「いらっしゃーい!見てってぇー!」

外には沢山の屋台。
コスプレをした人たちや自分たちにクラスの出し物の衣装を着た学生たちで賑わっている。
参加している学年は各学科の1・2年。4年のゼミの人たち。
3年は忙しいため参加はしない。
去年一度経験したが、専門学校の学園祭は高校の時より規模が大きいと思う。
調理系の学校であるため、屋台の出し物には気合が入っている。

「ちょっと橘さん?仕事してくれる?」

「…ごめん。この格好が気に食わなくてつい。」

私もじゃんけんに負けたせいでメイドの格好をさせられて客引きをしている最中である。昨日から何かと突っかかって来る冨樫に八つ当たりしながら即席の段ボールで作られた看板を持って店の前で客引きをする。

「なぁ、橘。」

「私語は慎んでください。冨樫君。」

いらっしゃいませーとマニュアル的に声を発する。
やる気のない声に反応する人などいなかった。

「そう言う橘さんはもっと心を込めて客引きしてくれませんか?全然お客さん来ないじゃないですか。」

「それは私だけの所為ではないと思う。」

クラスの出し物が人気がないのだなんて口に出しては言えない。
例え内心そう思っていても。

「ところで橘さん、この後のご予定は?」

「いらっしゃいませー。今なら出来立てが食べられますよー!」

「ちょっと、何急にやる気だして無視しちゃってんの。」

私語をやめない冨樫のことは軽く無視することにした。
それでも突っかかって来るこの人との距離をとってみることにした。
私が右に一歩動けば同じく右に一歩ついて来た。

「あーもう!さっきから何?!」

「だから、この後の予定、」

「何もないわよ!この後お昼まで空きでそれからまた客引き。そのあと地元の友達が来て案内する予定!」

「じゃあ、」

「ちょっと二人とも真面目に客引きして!」

店の前で口論していると屋台の中のクラスメートに怒られた。
冨樫の所為で私まで。
何か言いかけていたがそのあとはシフト交代の時まで私語はしなかった。


****


シフト交代の時間になったためメイド服の上に着けていたエプロンを次のシフトの子に渡し、一度教室へ戻った。
トイレに行ったり化粧を直したり、教室で携帯を構って休憩していたら、背後に気配を感じた。
勢いよく振り返ったらあまりにも近すぎて誰だかわからなかった。
でも、服装を見て冨樫だと分かった。

「さっきはごめん。一緒に怒られちまったな。」

「…別に。無視してごめん。」

教室には私たちの他に誰もいなくて声が小さくてもよく聞こえる。

「なぁ橘。これからさ、一緒にまわらね?」

「…」

冨樫は私の横にしゃがみ込み、目線を合わせてきた。
子ども扱いされたようで少しムカついた。
冨樫はいつもふざけているように見えて意外とやさしい。
でも、…

「…どーですか、橘さん。」

「…もちろん、嫌です。」

「えっ?!」

だって、この人の相手は疲れるから。
でも内心誘われたのは嬉しかったりもする。




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