女の子 | ナノ
痺れた

緊張する…。
よっし!
ピンポーン。
玄関のチャイムを力強く押した。

「はーい。」

中からくぐもった声が聞こえた。
それとほぼ同時に玄関が開いた。

「いらっしゃい。」

「お、お邪魔します!」

緊張している私を横に彼はニコニコしていた。
何だろう、楽しんでる。


家へ上げてもらい、部屋へ案内された。

「好きな所に座って。」

「はい!」

緊張して敬語になってしまった。

「落ち着いて。そんな取って食ったりしないから。」

何か物凄く不自然な笑いだ。
別にそのことを気にして緊張してるわけじゃない。
男の子の家に来るのは初めてじゃないけど、高校に入って付き合いはじめた彼の家に遊びに来るのは初めてで、それで着て行く服も悩んだし、彼の部屋はシンプルで落ち着くし、彼のいい匂いが…って、もう思考回路がおかしくなってきてるし!

「…何も言わないってことは取って食ってもいいのかな?」

「いや!ダメ!です…」

今だニコニコと笑っている彼がちょっと怖い。

「ねぇ、何で敬語なの?」

「…反射的に?」

「聞いてるのは僕なんだけどな。」

少し崩れた彼の笑顔が不気味。
なのに目を逸らせない。
あぁかっこいい。

「…そうだ、お茶持ってくるね。これ食べてて。」

うん、と頷き差し出された箱の中を開けて見た。
うわー凄い。
築島(ツキシマ)くん甘いもの好きなのかな?
箱の中には沢山のチョコや飴がギッシリと入っていた。
私はミルクチョコレートの小包を一つ摘み上げた。

「頂きます。」

袋を破り口へ入れる。
甘くて美味しい。
もぐもぐしていると築島くんが戻ってきた。

「お待たせ。」

「お、おかえりなさい。」

彼は私の前にお茶の入ったグラスを置いた。

「ありがとう。」

彼はニコッと微笑んだ。
それを合図にしてか私はグラスを取りお茶を一口飲んだ。

「…ねぇ、美菜子。」

「ん?」

彼は私の直ぐ横に移動してきた。
距離が縮まりドキッ。
近い…。
心拍数上がった。

「キス、していい?」

「……。」

え?
嘘でしょ?
築島くんが私に?

「つ、築島くん?」

あぁ多分顔真っ赤なんだろうな、私。

「東馬(トウマ)。」

「え?」

いつもより近くから声が聞こえる。

「東馬って呼んで?美菜子。」

耳元に移動した築島くんの口から名前を呼ばれてゾクゾクする。
ゆっくり近寄って来る築島く…と、東馬との距離約15cm。

「…と、東馬?」

「うん。」

にこやかに笑うと距離を詰めた。
目をギュッと瞑ると私の唇に柔らかいものが触れた。
東馬は合わさった唇を離した。
目を開けるとニコニコと笑う東馬の顔が目に入った。
その瞬間私は顔を背けてしまった。
すると右頬に手を添えられた。

「何で顔を背けるの?美菜子。…嫌だった?」

「嫌じゃないよ!は、恥ずかしかった…だけ。」

顔を背けたまま顔を赤くしていると東馬に抱きしめられた。

「と、うま?」

「…ごめん、美菜子可愛い。」

力を緩められたと思ったら唇を重ねられた。

「ん!」

東馬は上手に唇を割って舌を捩込んできた。
口の中で東馬の舌が動き回る。
もうダメ…。
クラクラしてきた。

「ん!!」

あ、足、う、嘘。
んぅー、痺れた?
と、東馬、足、当たってる。

「ん。」

「どうしたの?美菜子。」

糸を引きながら口が離された。

「な、んでもない。」

下を向き、足が痺れたことを隠していると、顔を無理矢理上げられた。

「嘘。何か隠してる。」

「う、そじゃ、!!」

急に足に触れられて痺れが襲った。

「…美菜子、足、痺れたの?」

「……うん。」

「何それ、可愛い。」

「え?…ひっ!ちょ、まっ…」
「たない。」

痺れてる足を触られ、言葉を遮り、更に攻めて来る。
ちょ、ヤバい、んぅー。
涙目になりながら東馬に寄り掛かり下から見上げると手を止めた。

「何?もっとやってほしいの?クスクス。」

ニコニコと笑いながら意地悪に言った。

「や、やめ、て。」

「何その言い方、そそられる。…俺を試してんの?」

「そ、そんなつもりはっ!!」

語尾が上がってしまった。
急に足に電流が走った。
また、触って…。
もう、いやっ!

「…ドS。」

ボソッと言い放つと東馬は私を押し倒した。

「痛、頭ぶつけた。…うわっ!…東馬?」

「聞こえたよ、美菜子?」

「え?何が…」
「ドSって。」

彼に見下されてドキドキしてる私は、Mかも。
気が付くといつの間にか痺れは治ってた。
だけど今度は全身が彼に麻痺させられてしまったかのように動きません。

「…取って食うつもりはなかったんだけどな、前言撤回。美菜子可愛いから頂きます。」

唇を重ねられて深くキスをした。
私は彼に身体を委ねた。




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