女の子 | ナノ
チョコ味

ソファに並んで座った私達は、ぎこちない。

「では、少し早いけど誕生日おめでとう。これは俺からのささやかなプレゼントです。」

「ありがとう。…ケーキ?」

15cm位の正方形をした立体形の箱がテーブルの上に置かれていた。
中身はきっとさっき言っていたケーキなんだろうな。

「そう!ハロウィンだからカボチャを使ったケーキにしたの。」

何でそんなに楽しそうに話すのよ。

「カボチャだけの甘みを生かしたケーキにしてみました。砂糖は使ってないんだ。だから甘くないよ!」

嗚呼キラキラしてる。
これはやられた。

「…じゃあフォークと皿持ってくるね。」

「うん!」

私はキッチンに取りに行った。
多分二人分あるから二つずつ持って行こう。

「お待たせ。智弘も食べるんだよね?」

「うん。じゃ!食べよ?」

何でこんなにウキウキしてんの?
うぅー。

「いただきます。」

皿に移したケーキをフォークで一口分とった。
そのままゆっくり口に運び、口を開けてパクッと食べた。
カボチャの味だ。
甘くない。

「…美味しい。」

智弘を見ると泣いていた。
っ?!

「えっ?何泣いてるの?」

ティッシュを渡しながら、智弘の顔が酷く可笑しなことになっていて笑えてきた。
ていうか、号泣なんですけど。

「…ひっ、だって。」

漸く落ち着いたようで話し始めた。

「真緒が、食べてくれた。…美味しい?」

「うん。美味しいよ。」

智弘は無言で涙を流し続けた。
そんなに泣かなくても。

「食べよ?ね?」

私は自分の分を一口食べ、智弘の分を一口分とった。

「…は、はい。あーん。…」

恥ずかしくて顔から火を噴きそう。
ぱく。
智弘は何も言わず食べた。

「…カボチャの味しかしない。…本当に美味しいの?」

「美味しいよ。カボチャの味がして。」

今度は自分の分をいっぱいとり頬張った。
もぐもぐもぐと口を動かし咀嚼する。

「…真緒、ほっぺについてるよ?…とってあげる。」

口に含まれたケーキによって喋れない。
智弘は近付いてきて口のすぐ横についたクリームを舌で掬って舐めた。
顔を離した彼の顔は真っ赤だった。

「…(恥ずかしい。)」

何恥ずかしがってんの?
舐められた私の方が恥ずかしいって。
ごくん、とやっと頬張ったものを飲み込めた。

「自分でやっといて恥ずかしがらないで!私の方が恥ずかしい!」

軽く智弘を叩きながら怒った。

「…ごめん。」

…うぅ。

「いいよ…。……それより食べよ!」

ケーキをパクパク少しずつ食べる。
隣で智弘も食べているのが横目に見える。
あぁ、絵になる。

食べ終わった私たちはお茶を飲んでいた。
智弘が淹れてくれた紅茶は美味しい。
甘くなくて。

「…真緒、もう一つプレゼントがあるんだ。受け取ってくれる?」

「うん、もちろん。」

何をくれるのかわからなかったけど返事をした。

「これ、もう一度食べてくれないかな?」

そう言って出されたのは小さな箱に入った4つのチョコレート。
一口サイズの丸いチョコ。
全部見た目が少しずつ違う。

「なるべく甘くならないようにビターで作ってみたの。どれから食べる?」

ああうん、食べる方向なんだね。
拒否権は無いと。

「じゃあ、…これ。」

私は1番色の黒いのを選んで取った。
甘くなさそうだから。

「…あ、美味しい。苦味がキャラメルの焦げたやつ。」

「正解。凄い真緒。俺的にこれオススメ。」

そういわれたチョコは智弘によって口に入れられた。
そのチョコは表面に白いのがついてた。

「美味しい。…これは?」

「食べてみて。」

また口の中に押し込まれた。
自分で食べれるのに。

「うっ、酒?アルコール入ってるじゃん。未成年に何してくれてんの!」

鼻に来る強い酒が体を熱くさせる。

「お菓子だから大丈夫だよ。それにそんなに度の強いお酒じゃ無いしね。最後の一個は俺の。」

ぱく。
智弘は自分で最後の一個のチョコを食べてしまった。
モグモグした後に酒入りチョコを飲み込んだ。
それと同時に智弘が顔を近づけた。

「な、何?…!?」

智弘は私にキスをしてきた。
柄にもなく。
しかも智弘からトロッとしたものが流し込まれてきた。

「?!…ん。」

ち、チョコ?
しかも少し甘い。
…やばい、クラクラしてきた。
酒の所為かな?

「おっはー!真緒いるー?……失礼しましたー。」

バンッとドアが開いて望の声がしたと思ったらバンッとドアが閉まった。
ていうか何勝手に上がってんのさ、いつもいつも。

「んー!」

智弘離して!
と、肩を押し訴える。
するとゆっくり離れた。

「ねぇ、今誰か来なかった?」

「私の友達の望。」

「恥ずかしい。…でも真緒の両親じゃなくてよかった。」

安心したように肩を落とした。
さっきまでのアレはなかったことになっている。
忘れてるだけかも。

「真緒!」

バンッとドアを開けまた望が入ってくる。

「…何、望。」

「ジャックランタンなんだけどさ、これでいい?」

さっきのキスのことを最初に聞かれると思っていた私は一瞬呆けた。
そして差し出された物は、掌サイズの小さなカボチャ。
の、箱。

「ありがとう。…開けていい?」

「どうぞ。」

箱を開けようとしていたところで智弘が止めてきた。

「ダメ!」

「何故?!」

何故と言ったのは望。

「後で俺が帰った後に開けて!お願い!」

「わかった。」

「えー!開けないの?じゃあ私帰るわー。じゃあね、真緒。お熱いキッスは程々にね。」

あー言った。
ちらり。
智弘顔真っ赤じゃん。

「…大丈夫?」

「ごめん。大丈夫じゃない。」

可愛い。
なんて思っていたら智弘を抱きしめていた。
直ぐに離すと今度は智弘が抱き着いてきた。

「好きだ、真緒。」

あっ。
耳元で喋らないで。

「私も好きです。」

「…これ、本当の誕生日プレゼント。」

離されて言われて一瞬何のことかわからなかった。
だけどわかる。
首に巻き付く冷たい輪。

「ネックレス?くれるの?」

よく見えないけど高いんだろうな。
でも嬉しい。
残るプレゼント。

「ありがとう、大切にするね!」

「うん。」


智弘が帰った後に望のプレゼントを開けてみた。
中にはピアスやリングが何個か入っていた。
中身を見たと電話で報告した。
話しの内容で自分が帰った後進展はあったか、と聞かれて、無かったよ、って答えたら鼻で笑われた。
私悪くないよ?
いいんだよ。
体の関係がなくたって付き合えるのだから。
それで私たちが幸せなら。


10月31日。
18歳になりまして、今日はハロウィンです。
私はお菓子いらないのでとことん悪戯をして遊んだ。
学校も終わって家へ帰ろうと思ったら校門に智弘がいた。

「あれ?どうしたの?」

「迎えに来たんだよ。乗って。」

促されるまま車に乗り込んだ。
窓を開け望に手を振った。

「ばいばい真緒。ふふふ。」

望は不気味に笑って歩いて行った。


車を走らせながら智弘が口を開いた。

「今日さ、家来ない?…と、泊まりで。」

横顔は真っ赤だった。
私もつられて赤くなりそうだ。

「い、いいのですか?」

「…うん。」

「じゃあ行きます。」

ああ、今日はなんていい日なんだ。
誕生日だから?ハロウィンだから?
もう、そんなのどっちでもいいや。
今が幸せなのだから。




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