恋の始まり | ナノ
プロローグ

「脱げ。」

「はぁ?!」

ていうか抱き着くな!
何なのこいつ。
この寒いに半裸って馬鹿なの?

「脱げって!」

「だから、何故?!」

「俺が寒いからだろ!」

いや、知らんし。
てか見れば分かる。
寒いだろうなそれじゃ。

「…服、どうしたの?」

何故聞く。
聞いたからと言って、服を貸せるわけじゃないのに。

「…さっき捨て猫見つけて連れて帰れないかわりに服置いてきた。」

何だ、いい奴じゃん。

「寒いなら早く家帰ればいいじゃない。何でそうしないの?」

「このまま帰れるわけねぇじゃん!」

まぁそうだけど。
なんで、私に声かけたんだよ。

「だから服貸して。」

「はぁ。…じゃあこっち来て。」

何してんだろ、私。

「………」

「此処ならいいか。」

「…橋の下に連れてきて何するんだ?」

お前が服貸せって言ったんだろうが!

「…脱ぐんだよ。服着たいんだろ?」

詰め寄って問う。
我ながら言い方がアレだな。

「…お、おう。貸してくれんのか?」

何で頬赤らめてんだよ。
調子狂うな。
ブレザーを着せるのは何か変だからカーディガンを貸そう。
…匂ったらどうしよう。

「はい。」

てか素肌の上に着るのか。
どうにかならないのか?それ。

「なぁ、家に来ないか?」

「…今何と?」

聞き間違え聞き間違え。

「だから、服の礼がしたいから家に来ないか?って。」

「………」

いやいやいやいやいや。
まぁ返してもらわなきゃ困るけど、嘘でしょ?
よりによって何で頬を赤らめてんだよ!

「…い、いいよ!明日土曜だし、月曜日の朝何処かで待ち合わせすれば!」

「それじゃ俺の気が晴れない。だから、来い!」

「ちょっ!痛い!!」

腕を思いっきり掴むな!
さすがに痛いわ!

「ごめん。でも、来て。」

力緩めてくれたのは嬉しいんだけど結局引っ張って連れていくのね。
この道、人通りが少なくてよかった。
誰もいないから、こんな変なところを見られなくて済む。

結局、手を離されなかった私は彼の家まで引きずられてきた。

「入って。」

「…お邪魔します。」

誰もいないのかな。
やたらと静かだなぁ。

「…お家の方は?」

「いないよ。共働きだから。…それより、何飲む?って言ってもお茶しかないや。茶菓子もない。」

「いいよ。すぐ帰るんだし。まず着替えて来なよ。」

あんたがカーディガン脱げば私はそれを着て帰れる。

「…やだ。」

はい?
聞き間違え聞き間違え。

「着替えて来なよ。」

「やだ。俺が脱いだらあんた帰るだろ?俺はもう少しあんたと話しがしたい。」

ドキッ。
何だその顔は。
やけに色っぽいな。
…何で、私ドキドキしてんだ?

「…わ、私はすぐ帰りたいの!」

何だろう、顔が熱い。
鼓動が早い。
落ち着かない。

「嘘。帰りたいって顔してない。」

な!
思わず後退りしたらソファに躓いて腰を下ろしてしまった。

「わっ!ちょっ!」

ポスンと座り込んでしまった私に覆いかぶさり、逃がさないつもりらしい。

「ねぇ、誘ってんの?…襲いたくなる顔すんなよ。」

そんなつもりはない。
至って普通の顔をしているつもりなのに。

「誘ってない!帰る!」

退かそうと思ったらソファに寝かされるようにして押し倒された。

「ひっ!何するの!?」

「何って…もっとあんたのこと知りたくなったから。…じゃあまずは…。」

そう言い、顔を近づけて耳元で囁かれた。

「名前、教えて。」

何だろう、ゾクゾクする。
従ってしまいそう。
ドキドキが止まらない。
ヤバい、嵌まっていきそう…。
彼から抜けられなくなる。
この気持ちに気づいたら、恋の始まり。




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