時の住人 | ナノ
プロローグ

しとしとと降る雨。
季節は、春が終わり、夏になる前の梅雨の時季。
じめじめする気候は鬱陶しい。

今日も天気予報は雨。少し晴れマークもあった。
朝、登校中は雨は降っていた。
1時間目の授業中、何と無く空を見上げると雨は上がっていた。
また降り出すかと思ったが、お昼を過ぎても降らなかった。
放課後に、ある決心をしていたため雨が上がっていてホッとしている。
6時間目に窓の外を見上げると雲行きが怪しくなって来ていた。
降り出しませんように、と祈りながら授業を受けた。


放課後。
場所は校舎裏。
回りには木が立ち並ぶ。
風もなく静かなこの場所に急に風が吹く。
木々は揺れ、カサカサと音が鳴る。
そこにいるのは私と、彼。

「急に呼び出してごめんね。
まず自己紹介するね。
私は2組のたか…」

可笑しなテンションで話しをする私の言葉を遮ったのは彼の一言。

「知ってるよ、名前。」

「え…あぁ……ありがとう。」

名前を知っていてもらえたのは正直嬉しい。
鼓動が高鳴る。

「…それで、花奈さん。
俺に何か用かな…?」

本題を忘れそうになっていたとき名前を呼ばれ、ドキッとする。

「あの!…私、卓くんのことが…好きです。
……付き、合ってください。」

ごもごもしながらやっと言葉を繋げる。
私の言葉を最後まで聞いて、彼は言った。

「ありがとう。
…その気持ちはうれしい。
でも俺、今彼女ほしいと思わないんだ。それに半端な気持ちで付き合って花奈さんを幸せにできるかわからないから、だから、ごめん。」

「…うん。話し聞いてもらえてよかった。…ありがとう。」

私は笑った。

「…それじゃあ、俺行くね。またね。」

「うん。ばいばい。」

私は手を振り、彼を見送った。
その後、少しの間、立ち尽くしたままほうけていた。
ポツンポツンと頬に雫が伝う。

「あっ、雨降ってきた。」

雨が降る中、傘をさすのも忘れ、重たい足取りで家へ帰った。
私はきっと、びしょ濡れになりながら、泣いていただろう。


失恋してから1ヶ月。
1学期も終わりに近付く。
そんな中私は、卓くんと友達になった。
友達の協力のお陰で、今や卓くんと普通に話しを出来るようになった。

もう少しで夏休みだからというのかやたら、仲よさ気な男女が目だった。
正直、人目のつくところでイチャイチャするのは止めてほしい。
彼が女の子と話しをしているのを見るだけで胸がチクんと痛むのに、もし、彼と女の子がイチャイチャしているのを見たら切なさを通り越して憤りを感じるだろう。
なんて思うのは未練がましい。
だって彼のことまだ好きなんだもの。


夏休みは特に何もなく、バイト三昧で終わった。
1回、私と仲の良い女の子たちと卓くんを含めた男の子数人で花火をした事だけが、夏休みの思い出。

2学期になり、中間考査が終わると文化祭の準備が始まった。
忙しなく働き回る人達はまるで働き蟻のようだ。
私達のクラスはバザーをすることになった。
販売係と裏方。
当日仕事が無い人もいる。
私は目立つ仕事は嫌なので裏方。
といってもあまり仕事はない。
だから皆が働いてるのをボケーッと見つめていた。

文化祭当日。
保護者や来賓、他校の生徒、地域の人がお客としてやってくる。
それはそれは賑やかだ。
私は仕事が無いため、教室の裏で一休みしていた。
[ブーブー]
バイブが鳴り、暗い中携帯のディスプレイが光った。

「もしもし。」

『ちょっと花奈。案内して頂戴。』

電話に出ると陽気な声をした母親だった。
私は渋々教室を出ると、指摘された場所へ歩きだした。

「花奈!此処よ此処!」

待っていたのは母と父、それに弟と妹。
正真正銘血の繋がった家族だ。

私は母たちに散々連れ回された所為で疲れ果て、教室の裏で寝ていた。
私は卓くんに起こされるまで眠っていた。

「はい、あげる。」

そういわれて差し出されたのは紙コップに入れられたお茶だった。

「…ありがとう、卓くん。」

私は貰ったお茶を一口飲んだ。

「……俺のこと"くん"付けないで呼んでいいよ。」

急に言われた一言にびっくりし目を丸くした。

「俺も花奈って呼んでいいかな?」

「…うん、いいよ。私も卓って呼ぶから。」

そういいお茶を飲み干した。


文化祭も無事終わり、期末考査の時期になった。
テストの所為で憂鬱になる。
当日はまぁまぁのでき。
返されたテストの結果は良い方だった。

テストが終わり1、2週間が経つと終業式。
冬休みは約2週間。
家族で初詣に出かけたり、雪で遊んだりしてるうちに冬休みは終わった。

3学期になると生徒会の引き継ぎが行われた。
生徒会なんて私には無縁の話。
3年生の先輩たちは、進路が決まった人達が多くを占めていた。
3学年末考査を終えた先輩たちは学校で見る機会が減っていった。

卒業式。
3年生の先輩たちは制服をきちんと着て式に望んでいた。
各学年4クラスあり1クラス約40名はいる。
各クラスの代表が卒業証書を受け取り、校長先生の話しがあったりして卒業式は終わった。

終業式は特に何もなく終わった。
3年生の担任だった一人と他の先生数人が離任した。

春休みになって、到頭、1年が終わった。




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