非通知からの忠告
リビングに戻った私は、満知が何か食べたいというのでデザートを作ることにした。
「と、言ってもフルーチェくらいしかないよ?」
「いいよー!」
たぶんこれ弟たちの分だと思うけど、いいや。
一人で作れるからと、満知と康太には待っててもらうことにした。
「はいお待たせ―。」
召し上がれ、とテーブルに置きスプーンを手渡した。
「「いただきまーす。」」
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高貴が風呂から上がり、リビングに戻ってきた。
「おかえりー。」
「おー。」
ソファーにどっしり座り込んだ高貴に声をかけながら冷蔵庫の扉を開けた。
「フルーチェ?食べる―。」
気怠そうに言う高貴にフルーチェの入った器とスプーンを手渡して、お風呂行って来まーす、と軽く声をかけてリビングを出た。
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風呂場に向かう前に着替えを取りに自室へ戻ろうと階段を上った。
「下着に、ティシャツに、短パン―。ん?」
階段を上がりきると部屋から着信音が聞こえてきた。
誰だろう、お母さんかな?
「はいはい今出ますよーっと。」
独り言をぶつぶつ言いながら自室のドアを開けた。
電話に出ようとして部屋に入った瞬間に着信音は鳴りやんだ。
急ぎ足をやや緩め携帯の置いてある机に向かった。
「…?非通知だ。」
携帯の画面を見ながら着信履歴を確認していると、また、非通知から電話がかかってきた。
「誰?」
不気味だったが出ないのもよくないと思い通話ボタンを押そうとしたら、切れてしまった。
「は?え?誰?!」
これでまたかかってきたらキリがないので携帯は放っておいてお風呂に入ることにした。
「ふあー、いい湯だった。」
風呂から上がってさっぱりしたのに携帯が気になったもやもやしてしまう。
自然とリビングに向かう前に自室へと足を運んでいた。
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「非通知から10件も電話?」
「そう。」
自室に戻り携帯を見てみると非通知からの着信が10件も来ていて、気味が悪くなり満知たちに相談することにした。
「心当たりは?」
康太は腕を組んで、探偵が質問するような風に聞いてきた。
「ないよ。出ようとしたら切れたし。誰なんだろう。」
「そうか…」
次もしかかってきたらどうしよう。
ピロリン。
「って来たー!」
「ど、どうしよ。」
あたふたしていると康太が肩を抑えた。
「大丈夫。出てみて。それですぐに代わって、高貴に。」
「俺?!」
私は二回頷き通話を押した。
「もしもし。どちら様ですか?」
『………』
応答はなかった。
もう一度聞いてみたがやはり応答はなかった。
「…パス。」
「はぁ?おい。」
高貴に携帯を投げ、代わってもらった。
「お前は誰だ!?答えろ!」
『………』
もの凄くかっこよく言ったのに相手は全く応答してこなかった。
「…ダメだ、切ろう。」
「うん。」
『切るな!』
「「?!」」
電話の向こうから男の子の声がして少し驚いた。
切るな、そういう声に聞き覚えがあった。
最近の携帯は便利だね、かけるとき非通知にできるのだから。
「さっくん?」
高貴から携帯を奪い取り耳にあてた。
『姉ちゃん、今の彼氏?』
「違うよ、友達。」
電話の向こうでさっくんが何か怒鳴っているのが聞こえた。
「な、なぁ、さっくんって誰だよ。」
我慢の限界と言わんばかりに高貴がしゃしゃり出た。
「弟だよ。朔夜。」
あーだからさっくん、と納得していた。
でもどうして非通知でかけてきたんだろ。
『姉ちゃん。』
ん?と耳を澄ませる。
『彼氏じゃなくてよかった。でも気を付けて。』
さっくんは心配性だなぁ。
そこが可愛いんだけど。
「うん。大丈夫だよ、さっきの彼には彼女いるから。心配してくれてありがとう、さっくん。」
『べ、べつに心配なんてしてないよ!じゃ、じゃあね花奈姉ぇー。…あ、わ私も!―ブツッ。』
あれ?今日向の声がしたような、切れちゃったけど。
それにしても気を付けてって何をだ?
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