作戦会議
高貴をリビングに一人にして、満知と二人っきりにする。
ただそれだけの作戦だ。
だけど、この作戦で失敗してはいけないのが高貴。
私と野島くんは席を外すわけだからそのことを満知に納得させられるような言い訳を考えなくてはならない。
有り得そうな言い訳を考えなきゃならないのは大変だ。
「ねぇ、高木さん。」
野島くんが話し掛けてきたので見つめる。
「俺らはどこにいるの?…外に買い出しに行ったなんて言い訳使えないよ?」
「「…あぁ。」」
高貴も同じ事を言ったのでバッと高貴の方に顔を向けると、慌てたように口を塞いだ。
「お、思ってないぞ?!買い出しに行ったなんて言おうなんて思ってなかったからな!」
必死に否定すると逆に怪しいんだって。
高貴隠すの下手だから尚更、バレバレ。
「まったく。何で今日に限って天気荒れるかなー。はぁ。」
窓の外を眺めながら溜め息を一つ付く。
「何処か空いてる部屋ないのか?」
高貴が私に問い掛ける。
「私の部屋は?」
(…高木さんの部屋……)
「駄目だろ。満知だって花奈の部屋くらい知ってるだろうし、そこに行って寝る何て言ったら花奈たち逃げ場ないぜ?」
(…ホッ。)
何かさっきから野島くんがソワソワしてるのは気の所為?
「…じゃあどこ行けばいいの?」
「いや、俺に聞かれても、花奈ん家知らんし。」
高貴は困った顔をした。
のも、束の間。
急に顔色を変え、目を輝かせた。
何か嫌な予感しかしない。
「なぁ、花奈。何処か隠れられる狭い場所ないか?」
「…狭い場所って、トイレとか?」
「うーん、満知が使うってなると面倒だから、却下だ。他には?」
そんなこと言われたって…無いでしょ。
「…クローゼット。」
今まで黙っていた野島くんがボソッと呟く。
「あ、あるけどさすがに二人は入れないし、一人で入るにしてもちょっと、…」
「あ、いや…今のは一例であってそこに隠れようって意味じゃ…」
「そうだ!」
野島くんが必死に弁解しているのを遮って、高貴が勢いよく立ち上がった。
「煩い!満知に聞かれたらどうするの?!」
「ご、ごめん。」
士気は衰え、シュンとして座り込んだ。
「で、何言おうとしたの?」
「クローゼットが駄目なら押し入れに隠れればいいよ!」
落ち込んでいた顔をパァッと輝かせて、言い放った。
「押し入れある?」
「…ある。」
チラッと野島くんを覗き込み答えた。
「誰の部屋にあるんだ?」
「弟たちの部屋。」
(…ヤベッ!少し期待した。)
「使っても大丈夫か?」
大丈夫だけど…。
「いい?押し入れで。」
野島くんを横目で見て聞いてみた。
押し入れ、狭いから密着しちゃうし、前にちょっといろいろあったから恥ずかしいよ。
「…い、いよ。」
(ヤバい、にやける。)
がーん。
嫌だって言ってくれると思ったのに。
何か嫌がってるようにも見えるのに、もう。
「…わかった。そこに隠れよう。じゃあ、急ごう。」
もう少しで風呂から上がる頃だ。
「じゃあ、頑張って高貴。」
「がんばれ!」
…そういえば高貴、言い訳考えたかな?
先頭を歩き、先へ急いだ。
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