時の住人 | ナノ
自然の力

トイレから戻ってきた満知はこの光景を見て呆けていた。

「この短時間で、何があったの?ねぇ、花奈。何で高貴爆笑してんの?」

「…何も、ないよ。」

余っていたケーキを一気に口に詰め込んでモグモグした。
何を聞かれたって言いません。

「もう、何で隠すの?!」

「いやーそれがさ、花奈の奴、ケーキちびちび食ってるもんだから可笑しくて。あははは。」

まだ笑うか、このやろー。

「はぁ、花奈ケーキ好きだもんね。この間もケーキバイキングで、むぐ!」

「しっー!」

私はケーキを全部飲み込んだ。
満知がおかしな事を言い出す前に口を塞いで止めた。

「んー!んふう!」

あはは、何言ってるかわからないよ。

「ぷはー、息できなかった。」

「ごめん、そんなに強く押さえてた?」

覗き込むと悪戯な笑みを含んで私を見上げた。

「へーきだよ。そのかわり、今日泊まるー!」

「「へ?」」

「いいよ。」

「「えっー!」」

「何、男子たち煩い。」

満知、そこまで言ってやるな。
彼らは何故か慌てふためいていた。
…あぁ、もしかして二人で何か作戦でも考えていたのかな。
余計な茶々入れちゃった。
満知は既に泊まる気満々だから言っても聞かないだろうな。

「あぁ、えっと飲み物は如何?」

「…俺手伝うよ。」

「ありがとう、高貴。二人は待ってて。」

そういい、高貴を違和感なく連れ出した。

「お待たせ。」

お茶の準備をしながら二人の作戦を聞いた。
いいアイディアだとは思った。
だが、泊まっていく事になると実行不可能。
次の作戦を練り直すことになった。

「お茶飲んだら勉強開始しますか。ねぇ、皆?」

「う、うん。」
「…おう。」
「…うん。」

満知の問い掛けに曖昧な返事をして私達はお茶を飲んだ。
満知が変な目で見ているが気にならない。
気にするとボロが出そうで…。
ついうっかり口走っちゃうかもしれない。

「ごちそうさま。」


満知はお茶を飲み干し、グラスを置いた。

「じゃ、じゃあ私達も勉強やろう。」

「「…お、おう。」」

それぞれの定位置についた私達はお互い勉強を始めた。

「何か楽しいね。」

野島くんが小声で話し掛けてきた。

「楽しい?そう?」

「うん。」

ニコッと笑った顔にドキッとしたのは内緒。
だって、最高に楽しそうな笑顔だったんだもん。
何が楽しいのかわからないけど。

時間が経ち、外は段々曇ってきた。
雲ってるなんて思ってたらあっという間に雨が降り出してきた。

「あぁ、降って来ちゃったね。やっぱり泊まるしかないな!」

「「「っ!!」」」

どうしよう。
これはまずいぞ…。
てか、雨降り過ぎじゃない?
台風に近いんじゃ…。
ぷるるるる、ぷるるるる。
家の電話が鳴り響いた。
急いで受けに言って受話器を持ち上げた。

「はい、もしもし。」

『………。』

受話器に耳を当て返答を待った。
かけといて返事なし?!

『あっ繋がってる。もしもし?花奈?ママよー。』

「へ?お母さん?どうして家電にかけたの?」

電話の相手は自分の母親だった。
妙に明るいテンションで話す彼女に疑問を問い掛けた。

『どうしてって、貴女が携帯出ないからよぉ。何度もかけたのに。』

あっ部屋に置きっぱなしだ。

「ごめん。で、どうしたの?」

『それがねぇ、こっち台風直撃しちゃって帰りの飛行機出ないのよ。』

「へ?じゃあ長崎に一泊?」

『そうするわー。家のこと宜しくね?』

私以外の四人は母の実家がある長崎に行っていた。
私はテスト期間だからと断った。
だからこの家には私一人…。
あぁそうか。
なら二人もとま…

「どうしたんだ?」

?!
後ろから高貴の声がして振り返ると直ぐ後ろに立っていた。

「びっくりしたぁ…。」

「何でだ?!」

トイレ借りるぞ、といい扉の中へと消えた。

『ねぇ、今の男の子の声じゃない?だぁれ?彼氏?』

興奮しはじめた母に少し怯えながら否定し話しを終え電話を切った。

「…あれ、どうした花奈。」

「…また余計なことを……。そうだ今日両親たち帰ってこないんだ。だから高貴達も泊まっていけばいいよ。雨も凄いし。帰るの大変だろうし。大丈夫、夜這いしたりしないから。」

不気味な笑みを浮かべ句切らず一気に喋った。

「それは作戦を実行せよとの事か?」

私は決め顔を作り頷いた。
だが、問題もある。

「…満知があんたたちが泊まるのを許すか…。」


「うん、いいよ。大勢の方が楽しいし。あっ、あんたたち花奈が可愛いからって夜這いするなよ!」

あっさりOK。
びっくりするな、満知の心の広さに。

「そっかぁ、美知子ちゃん帰ってこないのかぁ。」

残念そうに下を向く。

「なぁ、美知子ちゃんて?」

「私の母。」

「なっ!名前で呼んでんのか?!満知は!」

「うん。」

母も許してるしな。
ん?
野島くん、呆けてるな。

「高貴、ちゃんと野島くんにも説明してあげてよ。呆けてるじゃん。」

「お、おう、わりぃ。」

小声でやり取りをし、高貴は野島くんに説明しに行った。


外は先程より荒れてきた。
風は強いし雨は豪雨。
そして今夜、無事に済むのか。
高貴の運命や如何に!

「何やってんの。高木さん。」

「っ!!」

回想してる最中に野島くんに声を掛けられ驚き一歩引いてしまった。

「ごめん、驚かすつもりはなかったんだけど。」

「いや、こちらこそごめん。…勉強しようか。」

「うん。」

私達は夕飯の時間まで勉強して時間を潰した。




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