結末
授業もすべて終わり、放課後になった。
満知や卓、高貴にまたねと告げて、私はある場所に向かって走っていた。
着いたのは体育館裏。
ここにはあまり人が来ない。
この場所に来てほしいと頼んでおいた人は既に来ていた。
「ご、ごめん。野島くん。はぁ、はぁ。」
急いで走って来たため息が上がって呼吸困難。
「高木さん、落ち着いて。深呼吸しよう。」
促されるまま私は深呼吸した。
…手紙では名前だったのに名字、かぁ。
「あは、はは。…あの、ね。」
息は大体整ったのに、緊張でぎくしゃくしてきた。
もう一度深呼吸をし、息を整えた。
「昨日はごめんなさい。手紙に気づいてたのにすぐ読めなかったのをまず謝らせて!」
「…うん、俺どうして読めなかったのか知ってる、かも。」
「え!?」
「6時過ぎにバスケ部の部長と歩いてたでしょ?」
帰りに和喜先輩と歩いていたのを見られてたのか…。
「う…ん。」
「…先輩と、付き合ってる、の?」
私は首を横に振り、
「ち、違うよ。付き合ってない。昨日は先輩にバスケ部の見学に連れていかれて…」
言い訳じみたことを言って説明した。
「…そ、っか。」
(よかった。)
野島くんは今の説明で納得してくれたようで表情が緩んでいた。
「…それと、私…野島くんが、同じクラスなのを、朝のホームルームで知って、……ご、ごめん。」
最後、消え入りそうなほど小さな声で謝った。
「…ぷっ!あはは、は。」
「!!?」
あれ?
可笑しなこと言ったかな?
急に野島くんは腹を抱えながら笑い出した。
「ごめん、ごめん。いいよ、そんなことで謝らなくて。しょうがないよ。新しいクラスになってからまだ間もないもん。」
…野島くんてこんな子なんだ。
笑ってる顔、可愛い。
ドキッ?
「あ、ありがとう?そ、それでその、返事…なんだけど。」
本題に戻ると、私は返事をするために野島くんを呼び出したんだ。
謝りたかったのもあるけど。
(…なんか答え想像できるかも。)
「その、お付き合いとかは、ごめんなさい。で、お友達ということで、お願いします。」
…なんか恥ずかしい。
絶対顔赤い。
(照れてる顔可愛いな。)
「そっか、わかった。じゃあ友達で!」
(…諦めないけどね。)
「うん。」
私は、部活があるからと行ってしまった野島くんの後ろ姿を見ながらかっこいいなぁと一人思っていた。
…これは恋?!
5月になりました。
4月いっぱいは最初と変わりなく告られ振りの繰り返し。
満知や高貴は付き合っちゃいなよと構ってくる。
卓は最近ずっと眠そうにしている。
授業中は必ず寝ている。
私よく見てるなぁ、とか思う。
やっぱり気になるのかな。
恥ずかしい。
「ねぇ、花奈。」
ん?と、満知の方を向くとやたら近かった。
「ボーッとして、熱でもあるの?大丈夫?」
満知はそういい額を私の額にくっつけた。
近くにいた高貴も心配そうに覗き込んできた。
「大丈夫か?花奈。保健室行くか?」
満知が額を離したあとに、
「大丈夫。熱はない、よね?満知。」
「うん、なかった。じゃあどうしたの?…はっ!ついに彼氏ができて彼のことを考えて夜もねむ、」
「そんなわけはない!ぐっすり寝てきました!」
私は満知の妄想に直ぐさま突っ込み否定した。
彼氏なんてできてない。
昨日なんて10時に寝た。
これが恋する乙女のすることか?
「なーんだ。つまんないのー」
つまんなくてすみません。
「まぁ具合が悪くなくてよかったじゃん!な、満知。」
うん!と可愛く返事をした満知の笑顔にキュンときた、のは私だけじゃないらしい。
高貴もキュンときたらしい。
満知は可愛いからな。
高貴は満知にぞっこんだからな、うん、仕方ない。
お互い想い合ってるのに素直になれない。
「花奈!」
高貴の声は相変わらず煩い。
私はジーンとなる耳を押さえながら下を向いた。
「聞いてくれ、花奈!」
…何真面目な顔してんの。話、聞く気になるじゃん。
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