時の住人 | ナノ
クラスメイト

どこか大人しそうな、かと言って陰気ではない、普通の男の子。
そんな彼と只今玄関に二人きり。
手紙の事を思い出し叫んだ後、静まり返ってしまった。
お互いに口を開かなかった。
二人して立ち尽くしたまま。

「…あっ!ごめん。行かなきゃ!」

「えっ?!」

野島くんは急に慌てだした。

「また後でね。」

そう言い残して立ち去って行った。
…えっと、取り敢えず教室に行こう。
私は玄関を後にした。

教室に入ると、どうやら一番乗りだったらしい。
誰もいなかった。
私は自分の席に鞄を置き、廊下に出た。
他のクラスには何人かいるみたいで話し声が聞こえた。
窓に近付いてグラウンドを見下ろすと、サッカー部が朝練をしていた。
「ぎゃははは。」と高貴の大きな笑い声が聞こえ探してみると誰かとじゃれついていた。

「…何やってんだ、よ?!」

言い切る前に驚いて語尾が上がった。
あれ…高貴とじゃれついてるのって、

「野島くん?」

私は彼の名前を口に出していた。
自分の名前を呼ばれたのに気づいたのか野島くんが上を向いた。
下では高貴の他にも部員はちらほらいた。
野島くんが上を向いたのに気づいた高貴が私に気づいてこちらを向いた。

「おーい。花奈ー。」

高貴は私に大きく手を振って叫んだ。
餓鬼…。
私も一応手を振り返しておいた。
…私も餓鬼だな。
そんなことを思っていると下で高貴と野島くんが話しをしていた。
流石に此処からじゃ話し声は聞こえなかった。
それから二人は練習へと戻って行った。
暇になった私は教室の自分の席についた。
いつも持参している本を取り出し読んでいた。
すると前のドアの方から誰か入って来た。

「あれ、高木さん?」

声をかけられ本から顔を上げると何個か前の席に男の子が立っていた。

「…えっと、」
「俺、白石。」

「おはよう、白石くん。」

名前を覚えていなくてごめん的な感じに苦笑した。

「高木さんいつも早いの?」

「ううん、今日だけの予定。」

「そうなんだ。バスケ部のマネしないことにしたんだって?和喜先輩に聞いた。」

白石くんはバスケ部か…。
そういえばいたような。

「うん。半端な覚悟じゃ勤まらない仕事だからね。それにほら、優秀なマネいるしね。紗英先輩や京とか。」

言い終えると白石くんは顔を引き攣らせた。

「高木さん京先輩にしてやられたね。」

ん?先輩?京が?

「あれ?だって京…?え?!先輩?…」

「ごめん、混乱しちゃった?」

だって、京同い年だって言ってたし、和喜先輩に対しても敬語だったし。
もうわけわかめ…

「落ち着いて高木さん!」

そういい、いつの間にか近くに来ていた白石くんが肩を揺すった。

「京先輩はそうゆうところあって…それと心の声的なの全部漏れてる。」

気づかずに声に出てた!
は、恥ずかしい…うぅ。

「…京は、やっぱり先輩だったんだ…」

「大丈夫!俺も初めそのネタで騙されたから。」
(ちょっと違うけど。)

下を向き落ち込む私を白石くんは慰めてくれた。
優しいなぁ白石くん。
こんなんされたら女はイチコロだよ。

「…ありがとう…白石くん。」

(っ!…和喜先輩の馬鹿!)

「じゃあ俺朝練に戻るね。気が向いたら部活に顔出していいと思うよ。」

最後に"じゃあまた後でね"といい教室を出て行った。
同じクラスだもんね。
また後で会うよね。
また後でね……?
そういえば野島くんにも言われたな。
野島くんも同じクラスだったりして、あはは。

まさかと思ってたけど同じクラスだったね、野島くんと。
あはは、しかも私の斜め左前だし。
何これ、野島くんに対して物凄く失礼じゃん、私。




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