時の住人 | ナノ
先輩の話

自己紹介をしただけなのに拍手が起こった。
挨拶で今日1日だけって言ったのに、何だこの盛り上がりよう。
部員達は聞こえるか聞こえないかの声で、ひそひそと話しをしていた。
私は悪口でも言われてるんじゃないかと寒気に襲われた。

「先輩、私めっちゃ嫌われてるじゃないですか!!」
「え?!」

(何言ってんだろうこの子。寧ろ喜ばれてんのに。)

「そんなことないよ。」

「…そうですか?」

(自覚ないんだな、きっと。)

部員達をよく見ると一緒のクラスの男子もいた。
その人は騒いだり悪口を言ってる様子はなかった。
パンパン、と手を叩く音がすると、

「はい、静粛にー。」

先輩が一気に部員達を黙らせた。

「てなわけで、今日1日、マネージャー見学をする高木に、もう一度大きな拍手!」

言った瞬間に大きな拍手が起こった。
こんなに歓迎される理由が分からない。
拍手が終わると、先輩は部員達に指示をだした。

「じゃあ、いつも通りアップから始めます。紗英ちゃん、京(キョウ)ちゃん、宜しくね。」

「はい。」
「京(ケイ)です。」

二人同時に思い思いの返事をした。

「じゃあ俺は遅れた分着替えて来るから、花奈は此処で二人の仕事を見てて。」

「はい。」

先輩は更衣室の方へ消えた。
私は先輩に言われた通り、マネージャーのしていることを見ていた。
紗英先輩は笛を使って皆を指示している。
京(キョウ)ちゃんと呼ばれた、京(ケイ)先輩は水道の方へ行き飲み物を作っていた。
飲み物なら手伝えるかな…
そう思い水道へ行った。

「京先輩、手伝います。」

京先輩にじっと見られ、ドキッとした。

「私…あなたと同い年よ。」

「え?…2年!?ごめんなさい。」

私は先輩だと勘違いしていたらしい。

「だから、京(ケイ)でいいよ。京(キョウ)じゃないからね。」

名前を間違わないよう念を押された。
間違えて呼んでいるの和喜先輩なんだけどね。

「うん。分かった、京。私のことも花奈でいいよ。」

そう言い、飲み物作りを手伝った。


部活を始めてから随分経ち、時計は18時前を指していた。

「よーし、ストレッチして終わりにするぞー。」

和喜先輩が部員に声をかけ、ストレッチを始めた。
私はそれをマネージャー二人の横で見ていた。
ストレッチが終わり、挨拶をするときに前へ呼ばれた。

「最後に高木から挨拶。」
「え!!」

無茶振りにも程がある。
私は焦りながら前に出て話しはじめた。

「えっと、お疲れ様でした。」

「っしたー。」

運動部らしい返しが来た後、続けた。

「今日、一日ありがとうございました。至らない所もあったと思います。」

一息置いて、

「見学できて良かったです。本当にありがとうございました。」

一礼をして元の位置に戻った。
先輩が拍手をすると皆がつられて拍手をした。


帰り。
私はバスなのでバス停へ向かおうとしていた。
すると後ろから声をかけられた。

「どうしたんですか?先輩。」

"待って"と声をかけたのは和喜先輩だった。

「いやー女の子を一人で帰らせるわけないでしょ?」

と言いながら笑った。

「……。」

黙って先輩を見つめていると、

「送ってく。」

と少し真面目な声で言われて焦った。




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