時の住人 | ナノ
先輩の話

開かれた扉の向こうで1番に目についたものは、

「人数少な…い、ですね。」

そう、先輩を合わせて、10人いるかいないかの部員とマネージャーと思われる女子二人。
あまりの少なさに唖然とする。
中学の頃はこの人数の倍はいたと思う。

「一つ上の先輩が抜けてから、かなり減ったんだ。」

状況を説明してくれた先輩は次に付け足した。

「だけど、此処にいるのは2年と3年。」

「てことは、1年生が入って部員が増えるかもしれませんね。」

あと、マネージャーも。
そうすれば私は必要なくなる。

「そうなんだよ。だから今から楽しみなんだ。」

先輩は嬉しそうにニヒヒと笑った。
そんな先輩を誰かが呼んだ。

「部長!」

「ん?」

と、先輩はそれだけ返した。

「先輩、部長だったんですね。」

新事実に差ほど驚きもせず、話の間に割って入った。
先輩は先に私に返事を返した。

「そうだよー。言わなかったっけ?」

"はい"と頷くと先輩のことを部長と呼んだ声の主が私を指差した。

「部長、この人誰ですか?」

ちょっと苛立ちを含みながら言った。

「んー?新しいマネージャー。」

ニカッと笑いながら言った先輩の言葉に付け足すように、

「見学です。まだマネージャーやるとは決めていません。」

と言いきった。

「ふーん。」

文句あり気に私を見た、彼女はマネージャーだろう。
多分先輩と一緒にいたのを見て妬いたのであろう。
先輩はそこそこかっこいいから。
きっとモテるだろうし、彼女も先輩のことが好きなんだろうな。

「何ニヤけてんのよ、アンタ!」

彼女は私に怒鳴った。
そして私の付けているネクタイの色を見て、

「アンタ2年ね。私は3年よ!」

「はい、先輩。」

私はニッコリ笑って返事をした。

「っ!!私を見下ろすな!」

先輩は私より背が小さいため、見下ろしている形になる。
それが気に入らなかったのか叫んだようだ。
此処で先輩のことを可愛いと思ってしまう私はフェミニストのようだ。

「まぁまぁ、紗英ちゃん。そのくらいにして。」

止めに入ったのは和喜先輩だった。
"紗英ちゃん"と呼ばれた先輩は、少し頬を染めていた。

「あの、…」
「じゃあまず、花奈、軽く自己紹介して?」

私の話しを遮って、先輩が私に自己紹介を促した。

「いや、でもまだやるって決めたわけじゃないので…」
「いいから、いいから。」

また言葉を遮って、軽く背中を押した。
私は渋々、自己紹介をすることにした。

「えっと、高木花奈、2年です。今日1日見学させていただきます。宜しくお願いします。」

話し終えた途端に拍手が起こった。
私はビックリして、目を丸くした。




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