時の住人 | ナノ
先輩の話

玄関で鉢合わせた私と先輩。
先輩は私にマネージャーをやらないかと誘ってきた。
それで急に今日一日見学してみようという話に何故かなり、今私は先輩に手を引かれていた。
半ば強引に。
捕まれた手首が痛くなり我慢の限界。

「先輩!手痛いです!先輩!」

叫んでいるのに聞こえないのか、無視されているのか、振り向いてくれなかった。

「先輩!…和喜先輩ってば!」

私は話を聞いてくれない先輩に少々腹を立てながら、下の名前で呼んでみた。

「何?花奈。」

すると、先輩は立ち止まり、振り返った。
しかも満面の笑み。

「…わざと無視してましたね、先輩!」

「だってなかなか名前呼んでもらえなくて俺の名前忘れられたのかと思ったんだもん。」

少し頬を膨らませる先輩。

「はぁ…」

私はため息をつくと、先輩が覗き込んできた。

「怒った?」

「…いえ。でも、手痛かったです。」

そういった私は捕まれていた手首を摩った。
少し赤くなっている。
どれだけ逃がしたくなかったんだよ。

「ごめんね?ちょっと冷やす?」

このまま体育館に行くと怪しいかな?
先輩が私に暴力を振るったってことになったら謹慎沙汰になるかもしれない。
でも痛みは引いてるしそのうち赤みも引くだろうから大丈夫かな。

「いえ、大丈夫です。」

「じゃあ行こっか。」

そういい今度は優しく手を握った。
何で手、引っ張るのかな…?

(ヤベー、緊張しすぎて力入りすぎてた?)

まぁいっか。

(気をつけなきゃ。)

二人は自己解決しながら廊下を歩いて行った。


体育館の扉の前で先輩が立ち止まった。
そして手を離し私の方へ振り返った。

「花奈、これからこの扉開けるけど、…部員達を見てがっかり、ってのもおかしいけど、驚くなよ?」

先輩は忠告のようなことを告げて、扉に手をかけた。
そして扉は開かれた。




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