ここまで説明されたら、どう考えてもそれにしか辿り着かない。だけど、正直よくわかんないんだよね。同じ好きなのに違う、って。

 なんとなく違うのはわかる。だけどその“なんとなく”がわからない。

「わた、し」
「動揺しすぎやろ。落ち着いてから話しい」

 こくん、と頷いて視線を地面に落とす。考えがうまくまとまらない。
 わたしは翔くんが好き。だけどそれは家族に向けるのと同じもの。付き合いたいとか、そういうの、ない。いるのが当たり前、っていうのかな。

 ぎゅっとスカートを握りしめる。どうしたらいいの。わからない。

「ごめ、もうちょっと待って…っ」
「わからんくてもええんちゃう」
「え、」

 なんで、そんなこと。
 顔をあげようとしたら、ぽんと頭に手を置かれて結局視線は地面に戻る。

「ワシの好意理解しようとせんくてもええわ」
「な、なんで、でも、」
「なんや、ずいぶんマジメな考えするんやな。らしくないで」
「まじめとかそういう問題じゃないっ」

 それにらしくないって、さらっとひどい!わたしだってまじめに考えることあるもん。

「嫌やなければええんちゃう」
「……?」
「最初は好きやなくても、付き合うてから好きになるやつもおるからなあ」

 え、そうなの?それっていいの?
 告白されたのは初めてじゃない。だけど友達以上に見られないから断った。マネージャーやってるほうが好きだし、たいして恋愛に興味もなかったし。

「わからんなら、経験して知るんが一番とちゃう?」
「そうなのかな…」
「知ろうとせんかったら、そらわからんわ」

 む、それはごもっともだ。だから今のわたしは何もわからない。
 恋ってなんだろう。翔くんの言うように、付き合ってからでもわかるのかな。今までマネージャーの仕事のほうが楽しくて興味なかったけど、気になる。

 まあ、わたしは今までどおり一緒にいられればいいんだけどね。

「知る気があんなら、教えたってもええで」
「ほんと?…っていうか、そろそろ頭押さえるのやめてほしい!」
「さよが返事したらやめたるわ」

 ず、ずるい!顔見れないじゃん。見たところでどうせ何考えてるかわかんないんだろうけど!

「で、でもいいのかなあ」
「ワシに気遣うてくれとるん?優しいなあ」
「そういうわけじゃないけど!」

 お付き合いってやっぱり、どっちもそういう意味で好きじゃないとだめなんじゃないのかな?みたいな…。それに、これって好きじゃないけど付き合うねって言ってるようなもんだよね?

 だめかな、って思ったり、知りたいって思ったり。なかなか矛盾してるね…。

「ワシなんか嫌いーゆうんやったらしゃーないわ」
「嫌いじゃないよ!?」
「ならええんちゃう」

 うーん。翔くんがいいならいいのかなあ。断る理由が全く思いつかないもん。意味は違うかもしれないけど、好きなことに変わりはないし。
 それに、わたしが翔くんを、未だにお兄ちゃんみたいに見ていることだって知ってるよね。知っててそう言うんだよね。

「じゃあ、よろしく…?」
「よろしゅう」

 わしゃわしゃと頭を撫でられて、手が離れる。やっと頭あげれた!ちょっと首痛い…。
 翔くんを見るといつも通り、感情の読めない笑顔だった。…ポーカーフェイスってずるいよね。


君の色を故意に染め / 140506

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