春休みは部活に始まり部活で終わる。ようするに部活三昧、です!
今日の部活が終わって、体育館前でぼんやりしながらみんなを待つ。ぼーっとしてるとうとうとしそう。携帯!
携帯を見ると、お母さんからメールが届いていた。…こ、これほとんどお父さんの話なんだけど!?
もう、寮生活なんだしそんなに心配しなくてもいいのに。あと、お母さんに聞くぐらいなら自分でメールすればいいと思うよ!
「携帯見てニヤけるのはやめたほうがいいぞ」
「若!遅い!!」
「遅かねーだろ!」
むう。待たせてる側はそりゃあ遅いと感じないよね。待ってる側からしたら1分でも長いよ!
「翔くんはまだ?」
「あ?あー、電話してた」
ってか、と言いながら若はわたしの携帯を見る。
「携帯がどうかした?」
「それ、今吉さんとお揃いか?」
指差されたのは、青色のイルカ。わたしの携帯についているストラップだ。
「水族館つれてってもらったの!夏休み!」
「それを聞いてんじゃねーよ!」
携帯の画像フォルダを開くと、水族館の写真がたくさんある。イルカとか、クラゲとか、ペンギンとか。アザラシもあるよ!
水族館って大好きなんだよね。水のなかの世界。見ててすっごい癒される!
「あ、このペンギン可愛いから若にも送るね」
「いらねーよ!つーか質問に答えろ!」
「…なんだっけ?」
「てめぇ…!」
ぽち、っと。送信完了。若って短気だよねえ。そんなに怒ってたら眉間のシワ、消えなくなるよ?
「すまんな、待たせてもうたわ」
「翔くんおっそい!!」
「電話かかってきとってなあ」
翔くんは携帯を手に持ったまま、こちらに手を振った。揺れるピンク色のイルカ。反射的にぶんぶんと振りかえす。すこし後ろに諏佐先輩。
「あー、今吉さんのそれって藍白とお揃いなんすか?」
「せやで。さよに聞かんかったんか?」
「会話成立しなかったんすよ!」
「成立してたよ!クラゲいる?」
「だからいらねーよ!」
クラゲも可愛いのに!ペンギン派なの?ペンギンもいっぱい写真撮ったから任せて!
「色、普通逆じゃないっすか?」
「さよが青がいいってダダこねてなあ。そんでこうなったねん」
「違う!青がいいなーってお願いしたの!」
「コイツ、一度決めたら聞かないっすからね…」
ちょっとちょっと!勘違いしないでよ!ダダはこねてないもん。青が好きだからこっちがいいって、きちんと丁寧にお願いしたんです!
「ま、ワシよりさよのが青は似合うやろ」
「翔くんにピンクは似合わないけどね!」
「お前は似合わないって思ってる色渡したのか…」
「はは、似合わんほうがええわ」
ピンクなんて可愛い色、翔くんには似合わないよねえ。もっと暗い色のほうが似合いそう。可愛い系よりこう、…怖い系?どす黒い的な?
「似合わないとわかっててもつけるんだな」
「せっかく対だし、つけてくれないと困ります!」
「…なるほどな」
諏佐先輩の笑いかたって大人っぽいよなあ。翔くんは胡散臭いのにね!笑ってることに変わりはないのに、こうも違う。
「何諏佐に見惚れとんねん」
「みっ!?」
「オニーチャン、認めへんで?」
お兄ちゃん呼び嫌がるくせに、なんで突然そういう言いかたするかな!?それに見惚れてない!
ぶすっとしていると、冗談や冗談と言いながら頭を撫でてきた。
「諏佐さん、オレ帰りたいっす」
「そうだな、帰るか」
「あ、待って待ってわたしも帰ります!置いてかないでください!」
「さよはちょい待ちや、話があんねん」
え、わたしだけ!?何かしたっけ…?
諏佐先輩と若は薄情なことにさっさと帰ってしまった。ひ、ひい…部活のことかな。主将さま直々になんだろう…。
小さくうねりだす波 / 140504