返されたばかりの成績表をかばんにつっこんで、ばたばたと廊下を走る。目指すは2年生の教室。

「翔くんー!」
「なんや、騒々しいなあ」
「よかった!まだ部活行ってなかった!」
「待てゆうたのはさよやろ」
「そーでしたっ」

 じーっと先輩がたの視線がわたしに集中する。そりゃあ、下級生が上級生の教室にくるのって珍しいもんね。ぺこっと会釈をして、視線を翔くんに戻す。

「走ってきたやろ」
「よくわかったね?」
「髪乱れとるわ」
「えっほんと!?」

 なおそうとしたら、翔くんが前髪を梳いてくれた。

「ほら、なおったで」
「ありがとう!」
「ほな行こか」

 今日から部活再開だもんねー。はっ、モップがけがあるからのんびりしてたらまずいかな。用は手短に!

「テスト、ぎりぎり赤点補習回避しましたーっ!頑張った!」
「わはは!そらひどい結果やわ!」
「ぎゃ、ごめんなさい」

 目が、目が笑ってないから!
 翔くんの教えかたはすっごいわかりやすかったよ!教えてもらったときはちょっと頭よくなった気がした。前よりちょっと点数あがったと思うよ!

「全教科ぎりぎりなんか?」
「音楽は高かったよ!90点超えたもん」
「それはええわ。他は?」
「耳かしてっ」

 ひそひそと耳元で点数をささやくと、翔くんは呆れまじりのため息をついた。い、いや、これでもわたしにしては頑張ったんだけどなあっ…。

「あ、あー。わたし体育館のモップがけしなきゃだから先に行くねー」
「めっちゃ棒読みやけど」
「1年生の仕事だもんねーうんうん」

 じゃあまたあとでね。そう言って走り去ろうとしたら、ぐいと腕をひっぱられた。げ、嫌な予感がすごくするー…。

「さて、ちーとばかしお説教しよか」
「ひええもももっぷがけ…」
「そんなもん、他に任しとき」

 1年生のみんなごめん。わたしの成績、あんまりよくないみたいです。
 マネージャーだし、雑用はできるかぎりわたしがやりたい。減らせる負担は減らしたい。
 できない理由が自分の成績ってあたり、だめだめなんだけどね!頑張ったんだよ!?

「ワシが教えたゆうのに、ごっつええ結果やな」
「え、」
「ある意味尊敬するわ。こない悲惨な結果、ワシには真似できへんからな」
「うう…」
「ま、あんまゆうても無駄やろうけど」

 ぐ、その言い方は嫌いだ。むすっとしながら歩いていると、ぽんぽんと頭を撫でられた。これは、すごい好き。

「悔しかったら頑張りや」
「…頑張ります!」

 翔くんに頑張れと言われたら頑張るしかない!来年度から翔くんは受験生だし、あんまり聞けなさそう…。自力でどこまでいけるかなあ。

「頼ってくれてええねんで」
「へ?」
「来年度受験生やからって気にしとるやろ」

 そこは気付かなくてもいいところなんだけどなあ。翔くんってば昔から鋭いんだもん。隠し事ぐらいさせてほしいなあ。

「ひとに教えると理解が深まるっちゅーやろ」
「そうなの?」
「せやから無駄な遠慮せえへんといてな」
「じゃあそうする!」

 翔くんがそう言うなら甘えちゃおう。やっぱり教えてもらうほうがやりやすいし!覚えやすいし!

「今吉主将!」
「ん?」
「ふっふーん、呼んでみただけですっ」
「なんやそれ」

 最初は翔くんが主将に決まってびっくりした。今思えばいい人選だよね。頭いいし、気配りもできる。今吉主将、何回呼んでも胸がぽかぽかする。
 いじわるなとこもあるけど、試合相手にいじわるするのは全然おっけい。わたしの自慢の幼なじみさま。


幼なじみは炯眼の彼 / 140424

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