バスケと、バスケと、バスケと、バスケ。春休み何した?って言われたらきっとこう答える。
 …っていうぐらいバスケばっかりな気がする。見てるだけなんだけどね!

 今日はボールの点検がしたかったから、先にみんなに帰ってもらった。この時間が大好きなの。だからお手伝いという名のじゃまはさせないよ!

 …ん、これちょっと空気いれたほうがいいかも。音が悪い。

「お疲れさん。まだかかるん?」
「あ、翔くん。もうちょっと〜」

 ボールに空気をいれて地面に弾ませる。うん、この音ならいい感じ!
 …ボールを持っていると、こう、うずうずしてくる。見てるとやりたくなるよね。あんなふうにうまくはできないけど。

 じーっと翔くんに視線で訴える。鍵ならわたし持ちだから、ちょっとぐらい遅くなっても平気だよ。

「…しゃーない、少しやったら付き合うたる」
「わーい!ありがと!」

 軽くドリブルしながらスリーポイントラインに立つ。ひゅっと投げると、リングの前方ふちに当たって遠くにとんでいった。

「へたくそやなあ」
「むー、ずっと見てるのにー!」
「見てるだけで上手くなったらワシらの立場ないわ」

 ぽんと山なりにボールが投げられる。と、届かないー!!頑張ってジャンプして指先かする程度って、絶対わざとだよね!?

「あーすまんすまん、高すぎたわ」
「いじめ!!」
「ついクセでなあ」

 むー。わたしに合わせて投げるの絶対できるし、いじめいじめっ。ボールを取って、ぱたぱたと翔くんのところに向かう。

「はいっ」
「ん?なんや、犬みたいなことするんやな」
「犬!?違うよ!スリー見たいの!」

 見たいー見せてー!お願いしつつボールを差し出す。翔くんのバスケはかっこいいと思う。いいタイミングでスリー決めてくれるし。

「しゃーないわ。失敗したらどないしよ」
「とか言って成功するのが翔くんでしょう!」
「ハードルあげんといてーな」

 そう言いつつ、軽く放ったように見えたボールはきれいにゴールに落ちた。すごいなあ、やっぱりきれい。同じようにしてるつもりでもあんなきれいに入らない。
 やっぱり筋肉のつきかたとか。そこから手首の感じとか、自分にあうやり方を考えないとだめなのかなあ。見てるだけじゃ知識は増えても実力にはならない。

 …いや、別にバスケ上手になりたいってほどじゃないけど!見てると楽しそう!って思うんだよね。マネージャーの仕事も大好きだけどね。

「いろんなスタイル見すぎてごっちゃになっとるやろ」
「あー!それはありそう」
「頑張っとるのはわかる。けど、脚の使いかたが甘いなあ」

 シュートは手でぽんと投げるけど、脚の使いかたも大事って聞いた。見よう見まねじゃやっぱり限界があるよね。
 それだけみんな練習してるってことだ。見てるだけの素人には真似できないのは当たり前。すごいなあ。

「よし!翔くんのシュート見れたしおっしまい!」
「ほんま好きやなあ」
「ダンクもかっこよくて好きだけど、きれいって思うのはスリーかなあ」

 なんだっけ、…そうだキセキの緑色の子。中学生のときに見たことがあるけど、きれいだったなあ。すごく印象に残ってる。
 青色の子もすごかったけどね!キセキの子はみんなすごい。

 ボールをかごに戻して倉庫全体を眺める。とくに忘れ物はないね、おっけー。

「じゃーお待たせしましたっ!帰り、まっ…!?」

 ぽすん。一瞬状況が理解できなくて、目をぱちぱちさせる。ぎゅってしてくるなんて、どうしたんだろう。

「隙ありすぎて心配になるわ、ほんま」
「…翔くん、どしたの?何かあった?」

 ぽんぽんと背中を軽く叩く。翔くんはため息をつきながらちゃうねん、と呟いた。う、息が耳にかかってくすぐったい!

「なーんにもあらへんで?付き合うとるんやから、理由なんていらへんやろ」
「翔くんって甘えたさん?」
「ちゃうわあほ。ま、今はええわ」

 腕の力が強くなって、なんだかそわそわしてくる。落ち着かない。どきどきする。…はずなのに安心感があるから矛盾してる。なんなんだろう、これ。

「好きやで、さよ」
「う、ん」

 そんな、何度も言わなくてもわかってるよ。中身はまだはっきりわからないけど。翔くんがわたしを好きだと思ってくれてるのは伝わってる。
 こうやってふたりで話してたり、ぎゅってしてたら、恋が何かわかったりするのかな。しないかな。

 教えて、ね。


夜明けはまだこない / 140510

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