テスト期間中って部活がないから寂しいよね。あったら勉強できなくてテストの結果が悲惨になるけど。
部活はないし、テスト勉強があるから誰も教室には残らない。ふたりきり。勉強…楽しい…なあ……。
あーできない。何これ。どうやってやるんだっけ。前の約束通り紫原くんに勉強を見てもらっているんだけど、文字通り見てるだけ。見てて楽しいのかな。
苦手意識があるとやっぱり時間がかかる。頭が拒否反応を示すってやつ?数字を見たらじんましんでちゃう〜ってほどではないけど。
「あ、ここ違うー」
「げっ…」
口に含んだ飴を噛みくだく。ノート…見返したら載ってるかな。うん、載ってた。こういうやり方をすればいいんだね。
間違ってるとこを教えてくれるのはありがたいけど、もうちょっと何かあればいいのになあ。ちょっと欲張りかな。
…飴舐めよう。
「んー……」
あーだめ、これはわかんない。公式は頭にはいっているから基本的な問題はある程度できても応用がきかない。わかってるけど理解はできていないってやつなのかなあ。まだ基礎がきちんとできていないのかも。数学のばか…!
「む、紫原くんここ教えて!」
「やえちんって応用苦手なんだー」
「そうなんだよね…」
さっきから間違いを指摘されたりだめだと思うのはだいたい応用問題。頭がかたいのかな…。読解力がないとか?
飴を噛みくだいて、またひとつ口にいれる。
「あー違う、ここはこうー」
「ん…あ、ほんと、できた」
はー、やっと課題プリント終わったー!疲れたー!…なんだろ、この飴の包みの数。ちょっと多すぎると思う。やってしまった…。勉強して頭使ってるんだし、これぐらい消費したって許されるよね!
「お疲れさま〜」
「わっ」
撫でるのはいいけど髪をぐしゃぐしゃにしない!
「もう!…でも、ありがと」
「どういたしまして〜」
ほんとに見ているだけのほうが多かった。けど、間違いに気づいてなかったり、どうしてもできない問題には答えてくれた、と思う。
「おかげで捗った気がする!ので、飴あげます」
「え〜…」
「えー…!?」
「やえちんが作ったお菓子がいいー」
「今もってないし!」
「ちぇー、頑張って教えたのにー」
拗ねてるのかな?口をとがらせなくてもいいのに。可愛いひとだなあ。
つい笑ってしまったら、さらにぶすっとした。紫原くんって子どもっぽいよね。見た目は身長的な意味で高校生離れしてるのに。
「はー疲れた…アイス食べたいなあ。テスト終わったらアイス食べにいこうよ、コンビニだけど」
「やえちんがおごってくれんの?」
「わかったお菓子作るのやめる」
「行く」
はっやい返事だなあ、そんなに私の手作りが食べたいんだ。そう思ってもらえるのはありがたいよね。作り手冥利に尽きます!何がいいかなあ、夏だからあんまりもたないお菓子はよくないし、無難にクッキーとか?カップケーキとかドーナツもあり?うーん。
「やえちん、やっぱ飴ちょーだい」
「ほらー、言うと思った!」
だからさっき渋らず受け取っておけばよかったのに!
( 夏めく教室 / 131106 )