はあ、ついつい話しすぎちゃった。大勢だと、話題が尽きないからなかなか帰れないんだよね。もう19時すぎだー、晩ご飯に間に合うかなあ。
 料理部って女の子しかいないから、それだけ話題もたくさんでてくるんだよね。先輩方の質問攻め、すごかったなあ。料理部っぽい話をしたのって最初だけだったよね。あとは学校生活とか、クラスのこと、先輩の恋バナ。なんか、いいよねー。恋バナしてる先輩、表情全然違ったもん。

「アララ、やえち〜ん」
「お?紫原くん、こんばんは!」
「今帰りとか、ちょ〜っと遅いんじゃねーの?」
「いつもはこんな遅くないんだけど、ちょっと盛り上がっちゃって」
「ふーん」

 ジャージ姿ってことは、紫原くんのほうも部活が終わったばかりなのかなあ。

「紫原くんも部活、お疲れ様!結構遅い時間までやってるんだねー」
「うん、週末に試合があるしー」
「そうなんだ、それじゃあ練習にも気合い入るよねー」

 うちの学校のバスケ部ってどんな感じなんだろう。ちょっと興味があるけど、週末は用事があるんだよねえ。残念。

「てゆーか、やえちんな〜んか甘いにおいがするー」
「ああ、これかな?部活で作った夏みかんタルト」

 わ、わかりやすい。持っている紙袋の中身がお菓子だとわかったとたん、目がきらきらしだした。しかも視線はずっと紙袋。

「…これ、いる?」
「うん、ほしー」
「ちょっと待つアル」
「っうわ!?」

 びっくりしたあ…!!いつの間に横にいたんだろう。紫原くんと同じぐらいの背だよね…?なんでこんな大きいひとがぽんぽんいるんだろう。
 …アルって何?

「これ、もらっていいアル?」
「だめに決まってんでしょー」
「お前は黙るアル」

 うっわあ、こっちも視線が紙袋だ。わかりやすいなあ。部活後だからお腹がすいてるのかな。

「何やってんだてめぇら」

 同じジャージ…ってことは紫原くんと同じ部活のひとかな?隣にいるひとの背も高すぎるけど、これぐらいの身長って普通にいるものだっけ?金髪のひとだって小さくないはずなのに、小さく見える…。

「紫原…その女子は…!?」
「うわ、でたアル、モミアゴリラ」
「諦めろ岡村」
「ワシ何かした!?」

 えーっと?これはどういう流れなんだろう。結構ひどいあだ名が飛びだしてきたような気がしたんだけど。

「…えっと、こんばんは」
「……!!!」
「キモイアル」
「泣くんじゃねーよ、気持ちわりい」

 な、なんで泣いてるの!?というかこの扱いのひどさはなに!?

「あの、なんかごめんなさい…!?」
「気にしなくていいから。コイツ、女の子に話しかけられたことねぇから感動してるだけだし」
「放っといていいアル」
「え、えええ…!?」

 女の子に話しかけられて感動するってすごいね…!?いやいやそれだけじゃなくて、泣いた理由に扱いのひどさも含まれてないのかな。ありそうだよね。いや絶対ある。

「やえちん、お菓子まだー?」
「今それ言う!?紫原くんって本当にお菓子のことばっかりだよね!」
「だってやえちんの作ったお菓子とか食べたことねーし、はやくしてよねー」

 バスケ部ってこれが普通なの?あの3人の会話には、どう反応していいかわからない。紫原くんは超マイペースだし…。あ、もしかして助け舟をだしてくれたのかな。ちょっと冷静になろう…。

「よし。あの、これみなさんで食べてください!」
「えー!!」
「えーじゃない!」
「ワ、ワシらもいいのか!?」
「どうぞどうぞ!」

 家で切りわけるのめんどうだからって、調理室で切ってきて正解だったみたい。紙袋からタルトが入ったタッパーを取りだすと、揃って目を輝かせた。こういうのが好きなんだよね。だからお菓子作りってやめられない。
 お菓子が嫌いなひと以外なら、だいたいこれでなんとかなる。餌付けって言うと言い方が悪いけど、キッカケとしてはかなり便利だよね。

「ごちそうさまアル」
「ごちそーさん。うまかったぜ、ありがとな」
「うおおおおおーーーん!!!うまい!!!」
「モアラきもいうるせー黙れ。だからお前はもてねーんだよ」
「ひどっ!?」

 …あーえっと、うん。ついていけないときはとりあえず笑っておけばいいんだよね。

「わ、わたしそろそろ失礼しますね」
「帰るのー?」
「うん、スーパー…はもう閉まってるから、ちょっとコンビニ寄りたいし」
「じゃーオレも行くー」

 さっきタルト食べたばっかりなのにもうお菓子調達か!紫原くんだししかたないのかな。ドレッシングを切らしちゃったからそれだけ買おうと思ってたけど、せっかくだしお菓子も見ようっと。

「それじゃあ、お邪魔してすみませんでした。お疲れ様です!」
「ありがとなー」
「やえちんはやく〜」
「はいはい」

 そんなに急かさなくても行くよ!もう!


( 陽気な短夜 / 131102 )

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