寒くなってからというもの、お昼は教室でとることが多くなった。むっくんはわたしの前の友達の席を占領している。その友達はむっくんの席を借りているのだからおあいこだ。
 友達は足がすこし浮いているし、むっくんは窮屈なのか通路に足を投げ出しているけど。

「やえちんって冬休み何すんの〜?」
「掃除とおせち作り?あとテレビ見るかな」
「うわ……」

 何その目!うわ…ってリアクションもひどいよね。そんな引かれるようなこと、してないと思うんだけどなあ。

「やえちんは主婦か」
「掃除もおせち作りも主婦だけの仕事じゃないよ。生活力だよ、生活力」
「うっわうぜー」

 むっくんは掃除苦手そうだもんなあ。結構楽しいのにね。昔なくしたものとか、アルバムとか、いろいろでてきてつい手を止めたくなる。
 そんなことをしていたら日が暮れるから、誘惑をはねのけて掃除を再開する。終わってから手にとる。その時間がとても楽しい。

「掃除好きとか理解できねーし」
「意外と楽しいよ!むっくんの部屋も掃除してあげようか?」
「は!?」
「冗談だよ」

 さすがにひとの部屋を積極的に掃除するほどの掃除好きではないからね。それに、わたしも他人に自分の部屋を掃除されるのは嫌だもん。部屋のレイアウトとか、物が入ってる場所とか、勝手に変えられたら困る。

「むっくんはバスケの試合だっけ。いつ?」
「23日から〜」
「へえ、頑張ってね!」

 次は東京でやるんだっけ。慣れない場所で試合って大変だなあ。しかも大会となれば大勢のひとが見にくる。プレッシャーもすごそうだよね…。
 ふむふむと勝手にひとりで感心していると、不審そうな顔をしたむっくんに気付く。

「どうしたの?」
「別に〜」
「……そう?」

 別に、っていう表情じゃないから聞いてるんだけどなあ。でも答えてくれなさそうだし…。

 ――…あ。

「そういえば、試合後はそのまま東京?」
「うんー。クリスマスも正月もあっち〜」
「そっかあ。……そっかー」

 ということは、相変わらず今年も掃除とおせち作りかな。年越しはテレビを見つつごろごろしながら迎える感じ。あ、おそば作らなきゃね。

「クリスマスケーキ、東京まで送ってくんない」
「無茶言うね!?」
「えー、だめなの〜?」
「だめ」

 宅急便でケーキを送るのって怖いもん。ぐちゃぐちゃになっちゃいそう。そんなの絶対あげられない。
 ケチ、と呟いたむっくんに「ケチでいいです」とそっぽを向く。今日もちらほら雪が降っている。窓の外は相変わらず灰色だ。

「帰ってきたら作ろうか、お雑煮」
「え〜〜〜」
「小正月にはきゃの汁食べるんだけど、食べたことある?」
「何それ〜」
「じゃあお楽しみ、ってことで!」

 ほんとにたくさん作るもんなあ。ひとにあげても余裕で余る。数日で食べきる量を作るのだから、当然なんだけどね。
 …でもお父さんがいないときじゃないとなあ。むっくんを見たら絶対不機嫌になるもん。

 年末はちょっとさみしいけど、そのぶん年始に楽しみがあるから、いいかな。


( 冬休み間近 / 141008 )

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