体が重くてだるい。全身熱くて、息を吐くことすらも億劫だ。布団からでる気にもなれなくて、お母さんに「体温計と水」とメールする。いちいち装飾する気にもなれない。

 しばらくしてお母さんが頼んだものを持ってきてくれた。熱をはかると案の定で、数字を見ると余計に体が重くなった気がした。


- - -


「やえ、熱だって〜。先生から聞いた」
「…ふーん」

 誰だっけ、と思ったけど、たしかやえちんがよく喋ってる友達だ。珍しくいないな、と思ったけどそういうことか。どーせ無理しすぎて疲れたってやつでしょ。ばかじゃねーの。

「いつでもいいけど、電話なりメールなりしてあげたら?」
「余計なお世話だし」
「やえ、絶対喜ぶと思うよ。じゃね〜」

 何アイツうっざー。…と思ったけど、やえちんが喜ぶ、ねー…。やえちんの友達だけど、なーんか思い通りに行動するってのが癪に障る。
 ちら、とやえちんの席に視線だけ動かす。なんだろーね。このな〜んか足りない感じ。

 別に、アイツに言われなくたってもともと連絡するつもりだったし。授業中にメールすると怒られそうだし、部活終わったあとに電話しよー。


- - -


 だいぶ夜も涼しくなった。ベッドに座って、壁に頭を預ける。…やえちん、起きてるかなー。電話をかけてみるけど、なかなかでない。

『……もしもし』
「おはよー?」
『おはよ〜…?』

 でないかもー。なんて切ろうとしたらやえちんの声が聞こえた。この感じだと起こしちゃったかな〜。

「ばっかじゃねーの?どーせ夜遅くまで勉強して、ロクに寝てなくて疲れがでたんでしょ〜」
『…べ、別にそういうわけじゃ』
「じゃあ何?他に理由あるわけ?」
『……ないです』

 …熱だっていうやえちんに説教したかったわけじゃねーし、きついこと言いたかったわけじゃねーんだけど。でてくる言葉はなぜかそればっかりだった。

「体調管理もできないわけ?」
『あのさあ、それひとのこと言えないよねえ』
「……ってまさ子ちんに怒られたんだよね」

 あのときのまさ子ちん、怖かったな〜。てゆーか、なんで竹刀常備してるわけ?暴力反対だし。

『荒木先生は、たしかに怖いよねえ』
「部活のときとかもっと容赦ないから」
『たいへんだねえ』

 ふわふわぼんやりしていて、すこし間延びした話しかた。体だるいんだろうな〜って思うと心配だけど、……どーしよ。

「やえちん、熱どう〜?」
『今はね、解熱剤飲んだからだいぶ楽だよ〜』
「それっておとなしく寝とけってやつじゃねーの」
『えー』

 そういう、明らかに残念そうな声だされると、どうしていいかわかんねーんだけど。さっさと寝ろって言うべきなんだろうけどさ〜。切りたくない、って気持ちがないこともないってゆーか…。

「やえちん」
『んー?』
「……」
『どうしたの〜?』
「……病人はさっさと寝ろ、だし!おやすみ!」

 え、という声が一瞬聞こえたけど、容赦なく電話を切った。ほんとは話したいこといろいろあるけど〜。それは今じゃなくてもいい話だし。これで長々と話して、また明日休みですーってなるほうがヤダし。
 少しぐらいがまんするから、体調よくなったらお菓子ねだってやろー。やえちんの作ったやつならなんでもいいや。


( 病は気から / 140614 )

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