テストが終わって息を吐くと、一気に体が重くなった気がした。それにすごく眠い。
 机に頭を預けながら窓の外を見る。結構冬っぽい色になったなあ。もうすぐ雪が降るかもしれない。…雪かき、めんどくさいんだよね。でもちゃんとやらないと危ないし…。

 …それにしても、頭が重い。机の冷たさが気持ちいい。数学で時間をとられたから、他の教科が後回しになっちゃったんだよね。そのぶん1日にやらなきゃいけない量が増える。
 それも今日で終わったし、しばらくは息抜きができる。いっぱいお菓子つくりたいなあ。何がいいかな。

「やえちんお疲れ〜」
「むっくんもお疲れさまー」

 窓の外から声のするほうへ頭を向ける。机に腕を乗せて、すこし首をかしげながらこちらをのぞく視線。予想外の近さに一瞬目を見開いたけど、重い頭が持ち上がることはなかった。…疲れてるのかな。テスト後だもんね。

「……?やえちん、どうかした〜?」
「どう、ってどう?」
「んー…わかんない。けどなんか変だし」

 変ってひどい言いようだなあ。苦笑いすると、ますますむっくんが悩みだした。え、そんなに?そんなに変?

「そこまでされるとちょっと傷つくかも…」
「むー…、よくわかんないし、まあいいや〜」

 ぽんぽんと頭を撫でられる。むっくんって頭を撫でること多いよね。好きなのかな。わたしも…まあ、好きだけど。落ち着くんだよね。ふしぎ。
 …ああ、またちょっと体が重くなった気がする。

「…テスト、どうだった?」
「余裕だし」
「うわあ…」

 今、クラスの9割ぐらいは敵にまわしたからね。さすがだよなあ。勉強頑張ってやるように見えないのに。

「あ、やえちん、口あけて〜」
「えええ、なんで!?」
「いいからー」

 や、何がいいの、何が!そう言われると警戒したくなるもので、ぐっと口を噤む。

「やえちん、口開けてくんないと飴あげれねーんだけど」
「え、いや手のひらにのせてくれればいいよ」
「ヤダ」
「わ、わたしもヤダ」

 しばらく口を抑えていたけど、むっくんが拗ねはじめてため息をつく。もう、しかたないなあ。恥ずかしいからいやなんだけどね、ほんとは!
 体を起こして、ちいさく口を開く。

「…ん、甘い」
「もっといる〜?」
「いやいや味混ざっちゃうし、飲み込みそうで危ないから!」

 疲れてるときに甘いものを食べると、甘さが体に染みるよね。こんな甘いもの…って思ってるものでも、疲れているときはあっさり食べられたりする。おいしい。
 そういえば、もらったお菓子、まだたくさん残ってたなあ。1日にどれくらい食べたらいいんだろう。…た、体重計なんて怖くて乗れない。

「…戻ったー?」
「戻る…?なんの話?」
「なんでもねーし」

 …うーん、もしかしたら心配させたかな。むっくんってそうは見えないのに妙に鋭いところあるよね。疲れを見抜かれたのかも。
 なんだか意外だよねー。お世辞にもひとを気遣うとか、鋭いとか、そんなふうには見えないのに。

 そういうところから、好かれてるんだろうなあって実感する。それだけわたしを見ている、っていうことだもん。自惚れなんかじゃない、と思う。

「ありがとね」
「お礼言われるようなことしてねーし」
「いーの!とりあえず受け取ってよ」
「ふーん……」

 飴が小さくなっても噛みくだく気にならなくて、溶けるまで口のなかで転がした。


( 甘さ染みて / 140601 )

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