終わったーーー!!
 いちいち復習していたら間に合わないと思って、最終的に写すだけの作業になったんだけど。おかげで後半意味わかりませんでした。

 ずっと手と頭を動かしていたから疲れてしまった。無意識のうちにため息がこぼれる。
 今まで気が付かなかったけど、むっくん寝てるね…。お疲れかな?

 もうすぐ閉館ですというアナウンスが図書館に響く。そんなに集中してたのかあ。今日中にやっちゃいたかったもんね。

 紫色を梳いていると、顔が緩むのがわかる。
 むっくんの顔は見えないけど。無防備だなあ、って。起きてるとなかなか迫力あるよね。身長のせいかなあ。

 この前はずいぶんみっともないとこを見せちゃったなあ。自分があんな子どもっぽい怒りかたをするとは思わなかった。
 そりゃあ、特別気が長いほうではないし、いらっとすること自体は多い。だから自分の怒りかたを知らないわけじゃないけど。あれはないよね、逆ギレだもん。

 前は怒ったむっくん怖いなって思ったのに。あのときのは全然怖くなかったし、今思い出すとちょっと嬉しかったりする。
 あー、なんか顔が熱くなってきた。心配、かあ。

 …でもあれだよね。むっくんはお菓子でほいほいついていきそうな危うさはあるよね。好きになるかどうかは別としてね?
 むっくん、あのね。わたし、結構独占欲強いほうだと思うよ。よろしくね。


 もぞ、と紫色がかすかに動く。…起きたのかな?

「むっくん、もうすぐ閉館だって」
「ん?んー……」
「こら、二度寝しないっ」

 ぺしぺしと軽く叩くと、ようやくむっくんは起き上がった。すっごい眠そうだね…!

「おはよ。ノートありがとね」
「あれ〜、もう終わったの?」
「もうっていうか、やっとっていうか…?」

 わたしとしては“やっと”なんだけどね!
 ノートを返して、むっくんの支度が終わるのを待つ。だいぶひとが減ったなあ。

 外にでるともう真っ暗になっていた。そっか、もうそんな時期なんだね。

「やえちん、お菓子食べたい〜」
「コンビニ行く?」
「ん」

 ぎゅっと、あまりにも自然に手を握られたから思わず肩がはねる。…あったかい。

「まだ眠い?」
「……眠くねーし」
「手があったかいから、眠いのかなーって思ったんだけど」

 どう見ても眠そうだし、わざわざ嘘つかなくてもいいんだけどなあ。ばればれだし。

「オレさ、1日付き合ったし、ノートも貸したでしょ〜」
「うん」
「だから何かあってもいいと思うんだよね」

 ああ、うん。お菓子を要求しているんだよね、これ。それにしてはめずらしく遠回しな言い方するなあ。

「可能な限り、リクエストには答えます!」
「ぎゅってしていい?」

 ……え?

 あれ、えーっと。お菓子じゃないの?作ってーじゃなくて?あれ?
 ぽかんとしていると、繋いでいる手を引かれてあっけなく抱きしめられる。

「え、え、おおお菓子じゃないの」
「お菓子はこれから買いにいくじゃん」
「いや、そうじゃなくて…!?」

 そうなんだけど、そうじゃない!
 こういうときに要求されるものはだいたいお菓子作れ系だと思っていたのに!予想外というか、えーっと!?なんでこうなったの!?

「…ねむ、」
「いならもう帰ろうね!!」
「こんびに」
「行きます!」

 起きろの意とわずかな抵抗を含めて、むっくんの体を押す。は、離してよ〜、もう!

「もうちょっと〜」
「むっくんのばか!」
「ん」

 こうしてると落ち着くのがすっごい悔しい。絶対に言わないけどね!


( 36度8分 / 140504 )

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