人並みにテスト勉強はしていると思う。授業もきちんと聞いているし、ちゃんとノートだってとっている。平均的な成績っていうのに対して文句はない。
でもね。
「授業中寝てばっかりのひとに成績負けるっておかしい…」
「勉強苦手なの〜?」
「苦手じゃないけど…。うーん、理数系はちょっと…」
「ふーん、見せてー」
「やだ!」
伸ばされた手を叩いてため息をひとつ。紫原くんにあっさり見せられるほどいい成績はとってないよ!平均的だからね。何をやっても平均的。料理だけは平均以上だって自信はあるけど。
飴を口に含むと、紫原くんは何か思いついたといった顔をした。
「今思い出したけど、前は飴ありがとー」
「…いつの話?」
飴をあげるなんてしょっちゅうだから、うーん、どれを言っているんだろう。
「やえちんが起こしてくんなかった日のー」
「…ああ!だって寝起き悪いんだもん、起こしたくなかった…」
「やえちんはケチだけど、飴くれたから許す」
飴のおかげで許された!わりと単純というか、言いかたが悪くなるけど、ちょろい。だからこそ話しやすいのかもしれないけど。
「あの飴どこで売ってんの?」
「うちの近くのスーパーで売ってたんだけどね、気に入った?わたしもあの飴結構好きなんだよねー」
「やえちんってどこ住んでんの?」
「学校の近く!紫原くんは?」
「アララ?寮だからやえちんの家と近いー」
紫原くんって料理しなさそう。それに寮ならご飯は作ってもらえるんだよね。スーパー行かなくてもやっていけるから知らなくても無理ないのか。寮ってことは地元民ではないし。
言ってもわからないか忘れる気がするから、地図を書いておこう。
「ありがとー」
「どういたしまして!」
あのスーパーって毎日違うお菓子が安売りされているんだよね。これをチェックするのを日課にしたくなるけど、そうすると体重計に乗れなくなる。
紫原くんならしょっちゅう通いそうだなあ。…あれ、教えるのまずかったかな。
「そーだ、理数系苦手なら今度のテスト期間にみてあげる〜」
「…え?ほんと?」
それはすっごいありがたい!理数系は苦手意識があるからひとりでやると時間がかかるんだよね。間違っててもどうすればいいかよくわからなかったりするし。
「そのかわり、ご褒美よろしく〜」
「えーあー、まあいっか…わかった!」
絶対お菓子がほしいだけだよね!?それで教えてもらえるなら全然構わないけど!これからこういう要求されたら、お菓子ほしいんだなと思えば正解でしょう。たぶん。
( 隠さない心 )