意外と子どもっているんだなあ。やっぱり中学生率が高いように感じる。うちの学校受けるのかな。おかげで飴はごっそり減ったけど!かご持ち歩きってなかなか邪魔だよね。

「おっ、敦!」
「アララ〜、福井ちんとアゴじゃん」
「後輩にアゴ呼ばわりされるワシって……」
「モミアゴリラって呼ばないだけ優しいだろ」
「ワシ主将なのに……!!」

 先輩にたいして扱いが雑だなあ…!落ち込んでいた岡村先輩と目が合うと、とたんに表情が明るくなった。

「そ、その格好は…!?」
「ハロウィンが近いので、仮装して飴を配ってるんです」
「すげー本格的だな」
「友達が改造したんですよー!」

 スカートのすそをつまむと、ふわりふわりとレースが揺れる。もとはただの白いスカートだったのにね!布が多くてふわふわなのは最初から、これだけフリルとレースをつけたのは友達だ。もう普段用には使えないなあ。

「岡村、変なこと考えんじゃねーぞ」
「変なことって何!?しかもワシだけ!?」
「残念だけど飴あるからイタズラはさせないし〜」
「いっ…!?」

 いたずら、って!何言ってるの!?
 トリックオアトリート。お菓子くれなきゃイタズラするぞとは言うけど。実際イタズラするひとなんているのかなあ。されても困る!

「と、とりあえず飴あげますね。あとふたつしかないんで、ひとつずつですけど」
「ありがとなー」
「感謝する……っ!!」
「いえいえっ」

 飴ひとつでそんなに喜ばなくてもいいのに!表情がころころ変わって、岡村先輩って面白いひとだなあ。

「飴終わったね〜」
「うん、かごを置きに行きたいなあ」
「どこの教室〜?」
「空き教室があったよね。あそこが本部だからそこに行くよ」
「ん」

 それじゃあ失礼しますね。そう言って先輩ふたりに会釈をして別れた。結構たくさんあった飴も、頑張ればなくなるんだなあ。…あげる数指定されてないもん。多くあげたっていいよね。ばれないし。

 本部につくと、友達と数人の先輩がいた。

「飴配りお疲れサマ。どうだった?」
「楽しかったよ!やっぱり子どもは可愛いね」
「えー、あたしヤダ苦手。生意気じゃん」
「否定はできないけど…」

 そういう生意気なところも可愛いと思うんだよなあ。今日会った子はいい子ばかりだったけどね!

「で?紫原くんとご一緒ですか」
「ぐ、偶然だけどね!偶然!」
「はいはい。あんたの仕事はもうないから。とっとと行った行った」
「本部待機は大変だねー」
「うっさい。さっさと行け」

 ひどい!むすっとしつつ、またねと言ってむっくんのもとへ向かう。あ、帽子も邪魔だから置いていけばよかったかな。…これがないとただの私服だよね。やめておこう。
 廊下を歩きながら、小さくため息をつく。結構歩いたから疲れたのかな。それか、場の雰囲気に飲まれたのかもしれない。

「むっくん、どこ行くの?」
「屋上〜」
「え、なんで?」
「疲れたし」

 飴配りに付きあわせちゃったもんね。子どもの相手もちょくちょくしてたし当然か。ごめんねとつぶやくと、むっくんはわたしの顔をみてため息をついた。
 実は子どもが苦手だったのかな?そんなふうには見えなかったけど。それにずっと歩きまわるだけで、好きなとこ寄れなかったもんね。わたしは一緒にいてくれるだけでよかったけど、むっくんはどこかに行きたかったかもしれない。甘えすぎたかなあ。

 屋上につくとひとは誰もいなくて、静かで、すこし息がしやすくなった。落ち着くなあ。帽子をとると、風にのって髪がなびく。

「意外とひといないんだね」
「中庭に行ってんじゃねーの」
「そうなの?」
「室ちんと一緒のときに見たけど、ひとすごかったし」
「そっかあ」

 中庭のが気軽に行きやすいもんね。わざわざ階段のぼって屋上にくるひとなんていないか。

「やえちん、お疲れさま〜」
「ひゃっ!?え、え、どうしたの」

 突然頭を撫でられて、びっくりして反射的に距離をとる。ぼ、帽子落としちゃった!取りに行きづらいなあっ…。

「楽しそうだったけど、ちょっと疲れてるでしょ〜」
「…な、なんで…」

 なんでわかっちゃうかなあ。むっくんっていっつもそう。そんなに顔にでてるかな。むっくん関係のことならともかく、体調とか、そういうのはあんまり言われないんだけどな。
 視線を落とすと、すこしして帽子が被せられた。

「そういう性格だってわかってるけど、やっぱムカつくわ〜」
「う、」
「だからさー、やえちん。トリックオアトリート」
「……はい?」


( 呼吸をする / 140403 )

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