「おねえさん!おかしちょうだい!」
「はい、どうぞー」
「えー!まだあるよ!もうちょっと!」
「しかたないなあ。みんなには内緒ね?」

 …可愛いなあ。飴ひとつだとすくなくて、だいたいの子はかごを見てもうひとつ!ってねだるんだよね。

「毎回それ言ってね?」
「しー!それこそみんなには内緒っ」

 子どもの夢を壊すようなことを言ってはいけません。ひそひそ話していると、子どもの目線は確実にむっくんに移っていた。その身長でむっくんの顔見えるのかな。大きい目をこれでもかってぐらい見開いてて、…可愛いなあ。

「何〜?」

 お、むっくんがかがんだ。えらいえらい。それに合わせてわたしもかがむ。

「ひっ、ぼくはきょじんなんかにまけないぞ!」
「……」
「だって、むっくん」

 どうしよう、笑いそう。でも笑ったらこの子に失礼だよね。が、頑張ろう。

「おねえさん、きょじんにつかまったの?」
「ん?んー……」

 捕まったというか、捕まえた…?飴配るだけのお仕事についてきてくれてるし。

「そ、オレが捕まえたの〜」
「!!」

 あれ、捕まったのわたし?どっちでもいいけど。

「おねえさん、にげなきゃ!」
「え、え」

 服の袖をぐいぐい引っ張ってきて可愛いなあ。でも、子どもの力だからたいしたことはないんだけど。巨人から守ってくれようとしているのかな?

「でも、お姉さんも捕まえたんだよー」
「…やえちん、」
「つ、つかまえられたのに、つかまえた…??」
「うん。こうして飴配り手伝ってくれてるし」

 う、ややこしくしちゃったかな。シンプルに捕まっておけばよかったかな。でも守る必要はないんだよ。悪い巨人さんじゃないもん。

「巨人さんが手伝ってくれてるから、君に飴をあげられるんだよ」
「……!!」

 その子はわたしから飴に、飴からむっくんへ視線を移す。

「きょじんさんごめんなさい!ありがとう!」
「どういたしまして〜?」

 すっごいいい子だ!可愛い!頭を撫でると一気に笑顔になった。

「きょじんさんがわるいことしたら、いってね!ぼくがまもる!」
「頼もしいなあ。守ってね、ナイトさま!」
「うん!…あ、ままがまってる、またね!」

 お母さんのとこに戻ったら、嬉しそうに今の話をするんだろうなあ。可愛い可愛い小さなナイトさま。

「はあ〜……」
「お疲れさま?」
「やえちんのばか」

 えっ、なんでばかって言われたの!?心当たりないんだけど!

「それにしても、さっきの子、可愛かったなあ」
「守るったって、やえちんはオレのだし」
「…こらこら」

 さりげなく何言ってるんだか。うう、まだこういう言葉には慣れないなあ。ちょっと顔が熱い。

「照れてんの〜?」
「誰のせいだと思ってるの」
「オレのせいでしょー」

 そんなに嬉しそうな顔しないでよ。怒る気にもなれないんだから!はあ、ずるいずるい。

「あんまりいじめると、わたしのナイトを呼ぶからね」
「……負けねーし」

 むっくんも子どもだからなあ。こういうこと言われると冗談に聞こえなくて怖い。

「まだ飴残ってんの?」
「うん、あと数人にあげたら終わりそうだけどね」
「ふーん」

 ノルマクリアまでもう少し!次はどんな子に会えるかなあ。頑張ろう!


( 小さな騎士 / 140328 )

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