ピザまんかチーズ肉まんか。結構こういうのは迷わずすぱっと選んで買うことの多いわたしだけど、今回はしばらくうんうん悩んでいた。店員さんのはやく買わないかなこいつ、みたいな視線が痛い。

「やえちんがまだ決まってないなんてめずらしー」
「ピザまんかチーズ肉まんか、究極の選択…」
「は?…チーズ好きなの〜?」
「好きです、大好き」

 どうしよう。どっちがいいかなあ。いっそふたつとも買うとか。…晩ご飯食べれなくなるからそれはだめだ。うーん、また明日以降来て買えばいいって言われればそうなんだけど、今!今どちらを買うか!…うーん。

「じゃあやえちんチーズ肉まん買えば?オレピザまん買うし、そしたらわけれるでしょー」
「ほんと!?」
「ホントホント〜」

 わぁい、と喜びつつレジに向かってチーズ肉まん購入。コンビニをでるとすこし冷たい風が吹く。夜になるとさすがに肌寒いなあ。かばんを地面においてチーズ肉まんを食べる。チーズ美味しい。

「はい、あげるー」
「え、半分!?」
「アララ、全部欲しかった〜?やえちん食いしん坊ー」
「いやいや違う!半分も?一口でいいよ?」
「いーの、あげる」
「わ、ありがと…!」

 両手に中華まんって、全部もらったわけじゃないけどどう見ても食いしん坊にしか見えない。うーんどうしようかな、もらったピザまんを先に食べようかな。

「やえちんってすっごいおいしそうな顔して食べるよねー」
「そお?」
「両手に食べ物もってるの、バカっぽくて可愛いし」
「ばっ…!?」

 ばかってなに!ばかって!でも正直否定できないのがつらいところ。でもくれたのむっくんだからね。ばかっぽく見えてもおいしいもの食べてるからいいもん。

「やえちんってさ、もう進路とか決まってんの?」
「急にどうしたの?」
「ん、最近姉ちゃんからはやめに考えといたほうがいいってメールきたんだよね〜」
「…進路かあ」

 ピザまんを食べ終わって、両手でもったチーズ肉まんを見つめながら考える。周りには大学も一応視野にいれておいたらって言われているけど、わたしはこれと決まっている。

「専門、かな。製菓の専門」
「パティシエにでもなるの〜?」
「んー…どっちかというと喫茶店で働きたいかも」

 とれる資格はとるけど、ケーキ屋さんで働きたいっていう願望はあんまりない。どちらかというとチェーン店とかじゃなくて、落ち着いた雰囲気の喫茶店でケーキとかお菓子を焼きたい。調理も好きだけど、がちがちの料理じゃなくて家庭の味とか。そういう素朴なものを作りたい。だから調理ではなく製菓の専門。

「なーんかすごいねー」
「でも行く学校までは決まってないよ。秋田に製菓の専門はないし…」
「東京行っちゃえば〜?」
「は、」

 むっくんは一体何を言っているんだろう。わたしがどれだけ都会を苦手としているか知っているはず!東京の学校に通うってことは東京に住まなきゃいけなくなる。もうその時点で死にそう。家からでられるかも怪しい。

「ぜぜぜ絶対無理!!」
「でも東京のほうが有名なお店とか多いし得るもの多いんじゃねーの?」
「うっ…」

 それを言われると何も言い返せない。やっぱりいろいろなものが食べられるっていうのは大きな収穫になる。有名なケーキ屋さんのケーキだって食べてみたいし、自分がお菓子を作るときの参考にだってなる。喫茶店だっていっぱいあるだろうし、都会は怖いという部分を除けばかなり魅力的だよね…。

「わ、わたしのことよりむっくんはどうなの、進路」
「全然考えてないわー」
「なりたい職とかも?」
「うん」

 難しいよね。でも進学するにしても、だいたいこれ関係の職につきたいとか考えておかないといけないし。進学してからやっぱ全然違う系の職がいい、とはなかなかできないし…。それこそさいあく学校を変えなきゃいけなくなる。

「んー…むっくんって好きなことないの?」
「お菓子食べるの好き〜」
「あーうん、そうだね…お菓子以外は?食べ物全般好き?」
「?うん、好きだけど」

 ってことは食べ物関係かな。食べ物関係の職業で、男の子だからそれなりに収入のありそうな職業がいいのかな…うーんうーん。

「…例えば、今自分が食べてるものの成分とかって興味ない?バランスのとれた献立つくるのとか」
「栄養士〜?」
「そうそう」

 うーんと考えながらむっくんは新しいお菓子の袋をあけた。よく食べるなあ、部活後だからお腹すいてるのかな。

「そういうの、やえちんのが向いてそう〜」
「構造式とか見たくない」
「理系だめだもんねー」
「理系の勉強するぐらいならひたすらお菓子つくりたい…」

 構造式なんて見てたら頭痛くなるもん。気になる分野ではあるけど理系ってだけで遠慮したい。

「ウーン、いちおう考えてみるわ〜」
「うんうん。自分の進路は自分で決めるんだよ」
「わかってるし〜」

 不機嫌になったむっくんにポケットにはいっている飴をあげると、とたんに機嫌がよくなった。…いやほんと、大丈夫かなあ、このひと。

「気になる分野が見つかるといいね」
「ん、あとやえちん東京きてね」
「…考えとく…」

 東京のほうが学校自体が大きいと思うし、人が多いぶんいろいろなことを吸収できるかもしれない。でも東京怖いし…でもまあ、迷う時間はあるしね。専門に行くことは決まっているのだから。


( 進む路の話 / 140118 )

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