東京怖い。物騒だとか、冷たいひとが多いとか。空気が汚くて、どう見ても曇ってるようにしか見えない空を晴天とか言っちゃう。
 ようするに、わたしは東京に対して偏見だらけの田舎者。

「え、もう1回言って!」
「だからー、東京の中学に通ってたのー」
「は、はつみみ…」

 何それ、怖い……。実際どうかはわからないけど、話を聞く限り東京怖い。ニュースで物騒な事件ばっかりやってるし、都会ってひとがたくさんいるし。とにかく!怖いイメージしかないんだけど!

「むむむっくんが都会人ってことは実はすっごい怖いひとだった…!?」
「やえちんってさー、東京にどんなイメージもってんの?」
「怖い」
「は〜?」

 ま、まだ衝撃残ってるよ。言われてみれば田舎者って感じはしない。
 もしかして都会って怖いっていうか、変なひとが多いのかな。むっくんも変わってるし、やっぱり東京って…!?

「ビビリすぎだし」
「いっ!?」

 むっくんがデコピンするとしゃれにならないぐらい痛いからやめてほしい!おでこ痛い。ちょっと泣きそうなくらい痛いんだけど!

「…やえちん、大丈夫?」
「だ、だれのせいだと……もう絶対お菓子作らないから…」
「げっ、やえちんごめーん。まいう棒いる?」
「いらない…っ」

 謝る気あるのかないのかどっち!?ここでまいう棒を受け取ったら負けな気がする。許さない!もうちょっと手加減しなさい。…もしかして、これ一応手加減こみかな。男の子って怖い。

「やえちん怒ったー?ごめんねー?」
「怒ってないし!!」

 あっでも今怒ったけど!挑発してんの!?挑発してんだよね、これ!?

「怒ってるし〜、落ち着きなよ」
「おちついて…っんぐ!?」

 …ん?今何が起こったの?口のなかが甘い。…棒つき飴?

「落ち着いた〜?」
「落ち着くどころか放心状態…」

 多分、わたしの頭上に大量のクエスチョンマークが浮かんでたと思う。

 びっくりしすぎてさっきまで怒ってたのが全部ふっとんじゃったよ。なんかもう、どうでもいいわ…。そういえば何話してたっけ。

「は!そうだ東京!」
「多分やえちんが思ってるほど怖くねーし」
「えー…」
「あ、1回行ってみればいいんじゃねーの」
「やだ」

 回答までにかかった時間、約0.1秒。わたしは田舎だけどここが好きだし、都会怖いし、怖いし、怖いから行きたくないし行く必要もない。用事がない。用事がないのにわざわざ怖いところに行く必要はないよね!

「そういや、お菓子まだー?」
「あー!夏休みはいってからでいい?」
「インターハイ終わってからになるけどー。あと甘いやつがいいー」
「はいはい、すっごいアバウトだね…」

 だいたいが甘いと思うから全然選択肢が狭まらない。でも何作ろうか考えるのはすごく楽しいから、多くて構わないんだけどね。ひとりで作るぶんならあっさり決まる。
 夏休み中になるし、連絡がとれないと困るということで今更ながらアドレス交換。インターハイで勝つか負けるかはわからないけど、それでも試合が終わってからこっちに帰ってくるわけだし、気合入れて美味しいお菓子を作ろう!


( 東の京の都 / 131108 )

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