わたしのお昼はいつも購買だ。だってお弁当作ろうにもキッチンにはいるのは禁止されているし、作ってもらえるわけがないし…。

「お弁当いいなー」
「貴様はいつも購買か」
「そーだよー!どうせいっつもパンだもん」

 ていうかそんだけでたりるの?石田くんって小食だねー。なんかわたしが大食いに見えちゃうけど、わたしが普通なんだからね。たぶん。

「兄さんと竹中先輩って付き合い長いのかなー」
「なんだ、そんなことも知らないのか」
「……ふーん」

 そうだよ、どうせ兄さんのことなんか全然知らないよ。でも兄さんは優しくて、かっこよくて、わたしを認めてくれるひとだってことはわかる。反対に言えば、それしかわからない。
 どこまでつっこんで聞いていいのかな、そういうの。兄さんのことは大好きだけど、知りたいけど、聞いてだめって言われたらショックうけそう。

「いいよねー石田くんは。兄さんと同じ学校通えてー」
「何を言っている?貴様も同じ学校に通っているだろう」
「そーじゃなくて!中学とかさー」

 わたしの知らない兄さんをいっぱい知ってるってことでしょ、そういうのやっぱずるいよー!兄さんになんてそんな頻繁に会えなかったし、それにこっちで見せる姿と学校で見せる姿ってやっぱり違うじゃん?
 だからやっぱり、ずるい。

「男の子はいいなー、わたし男の子になりたい」
「無理だ」
「まじめに返さないでくれる?」

 まったく、冗談が通じないなあ。パンをもぐもぐしていると、隣で悪戦苦闘しながらお弁当を食べようとしている黒田くんが目にはいる。

「な、なぜじゃあああ…」
「逆になぜ箸で食べようと思ったか聞きたいんだけど」
「弁当には箸と決まっているだろう」
「ていうかその手で箸つかえると思ってんの?ばかじゃないの?」

 ぐぬぬ、と唸っている黒田くんをじっと見つつまたひとくちパンをかじる。助ける気はないよ、だってそんな義理ないもの。頑張って食べてください、お昼休み中に食べ終わるといいね?
 斜め前にいる大谷くんがそれはもう楽しそうだったので、ああやっぱりこのひとは敵にまわしちゃいけないんだなと改めて思った。もしかしてこの手枷って大谷くんが関わってたりして。…うわー、怖いわー。ありえそうで怖いわー。

「3人はいつから一緒なの?」
「だいぶ前からだ」
「そのだいぶを聞いてるんだけど?」
「…小学生のころからだ、秀吉様とも小学校で初めてお会いした」
「腐れ縁というやつよ、ヒヒッ…」
「まったくだ」

 うんうんと頷きつつ大谷くんに睨みをきかせている黒田くんに苦笑い。減っていないお弁当をしまいはじめて疑問に思っていたら、どうやら箸を折ってしまったらしい。…だから、なんで割り箸を選んだの?ばか?このひと、どうやって生活してるんだろう。どうでもいいけど。

「…ん?っていうかそしたら兄さんと結構付き合い長くない!?」
「時期だけで言えば貴様のほうがはやいだろう」
「でもそんなに話してないもん…」

 ずるい、ずるいずるい。そんな前から。そりゃあ時期だけで言えばわたしのほうがはやいけど。だって小学校にあがるまえから知ってるもん。
 でも、そんなの関係ない。知り合った時期と話した数は比例しないもん。

「いいなー、だっていっぱい兄さん見てたんでしょー…」
「それを言うなら貴様も同じだろう」
「え、なんで?」

 きょとん、としながら石田くんを見る。

「貴様といるときの秀吉様は、今まで見たことのない表情をされていた」
「そうなの?いつもどおりじゃない?」
「つまり、そういうことだ」

 えー?いまいち意味がわからない。わたしが石田くんをずるいって思うように、石田くんもわたしをずるいって思ってる?…なわけないよねー。じゃあなんだろう。石田くんが知っててわたしが知らないことも、わたしが知ってて石田くんが知らないこともあるってこと?
 でも、どちらにせよずるいことには変わりないもん。

「時間は限られておるゆえ、気になるのであれば太閤に話しかけたらよいであろ」
「…うーん、そうだよね。今は同じ学校だし1年しか一緒にいられないもんね…」

 この1年でいっぱい兄さんと話して、いっぱい兄さんを知ればいいんだ。石田くんが知ってることよりもっと、たくさん!

「ありがとう、大谷くん!でも許さない!」
「貴様、形部に喧嘩をうっているのかッ!」
「は?そっちこそわたしに喧嘩うってんの?かうけど?」

 大谷くんは敵にまわしたくないし、まー多少媚うるけど、石田くんに媚うる理由がないからね。兄さんもいないし。

「お前さんたち、仲良いな」

 黒田くんのつぶやきが聞こえて、石田くんから視線をうつし、ぎっと睨みつける。お前の目は節穴か。仲、良くないから!

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