葉桜になってしまったなあ、とぼんやり窓の外を眺める。入学してもうすぐ1ヶ月がたとうとしているけど、正直お友達はできない。というか、私だったらお友達になりたくないと思ってしまう。だってさー、常識的に考えて、石田くんや大谷くん、黒田くんと仲良くしている人と仲良くなりたいと思うか。つまりそういうことである。

「純野」
「んーはいはい、何?」

 4月も終わりが近くなると、日差しがすこし暖かくなる。それでも上着がないと肌寒くはあるけれど、心地の良い陽気だ。ぼんやりしてしまうのも、授業中うとうとしてしまうのも無理ないと思う。いや、別に私がうとうとしているわけじゃないです、決して。…誰に言い訳してるんだろう。

「…とおっしゃっていた」
「え?聞いてなかった」
「貴様ッ…!!」

 そうそう、ぼんやりしてしまうのも、仕方のないことなんだよ!…石田くんにすごい目で睨まれてしまったので反省します。

「で、何だっけ?」
「…秀吉様が、放課後中庭に来てほしいとおっしゃっていた」
「兄さんが!?うわ!うわー!!えっいつ会ったの!?いつ!?」
「うるさい黙れ、さきほど廊下で偶然お会いした」
「は!?ずっるい!」

 つまり、私に会いに兄さんがくるところを偶然石田くんが出会ってしまい、伝言を頼んだ、と。石田くんは私と兄さんの邪魔をした、と。馬に蹴られてしんでしまえ。
 それにしても、放課後は毎日生徒会室にお邪魔しているというのに、わざわざ中庭にきてほしい、とは。生徒会室ではできない話でもあるんだろうか。こういうときは大体私の都合の悪いお話だって決まっている。

「私、説教されるようなこと、してないのになー」
「何?」

 石田くんが何を言っているんだこいつとでも言いたげな目で私を睨んでくる。説教が必要なのは主に石田くんと石田くんと石田くんだと思う。私は普通…じゃない全然普通じゃない、こんな人達と仲良くしてるとか全然普通じゃないけど問題なく生活して…あれ、おおあり…?いやでもこの人達とは兄さんだって仲良くしてるし、世間一般から見れば問題おおありだけど、兄さんから見たら問題ないはず。
 …つまり、説教される可能性は低いとみた。が、他に何も心当りがないし、何のお話なんだろう。

「兄さんと2人だけで話せるのは嬉しいけど、気が重いな…」
「…貴様、病気か?」
「え、何言ってんの」
「貴様の口から秀吉様に会いたくないという言葉がでるとは、病気以外の何がある」
「ぶん殴るぞてめえ」

 それに会いたくないとは言ってない!気が重いなーと言っただけで病気扱いとは失敬な。
 予鈴がなり、自分の席に戻りぼんやり考える。何も心当たりがないけど、兄さんがわざわざ呼び出すってことは何かあるはずで、しかしどれだけ考えてもわからない。
 もう、めんどくさくなってきちゃったなあ。ふわふわとやってきた心地よい眠気に身を委ねた。



「わざわざ呼び出すってどうしたの?」
「都子、お前に聞きたいことがある」
「うん、何?」
「学校生活は順調に進んでおるか?」

 予想外の方向がきた。説教でもなんでもなく、私の学校生活に対する心配ということか。心配してもらえるのは、とってもありがたいことだよなぁと思いながら左の袖を握る。

「うん、順調ー!楽しいよ!」
「…そうか、ならよい」

 兄さん以外はわりとどうでもいいのは本当だ。本当だけど、なぜか少し寂しいなぁと思うときがある。何に対して寂しいと思っているのか、よくわからない。

「都子、今日も生徒会室にくるのか?」
「行っていい?」
「当然よ」
「じゃあ行く!」

 ぎゅっと握った兄さんの手は私よりもだいぶ大きい。兄さんは必ず私の手を握り返してくれる。それがとても安心するのだ。兄さんは、私にとっての太陽だ。

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