今日は待ちに待った入学式!校長先生の眠い…もとい、ありがたいお話をうとうと…真剣に聞いていると、ふいに兄さんの声がして勢いよく顔をあげる。ちなみに兄さんは豊臣秀吉と言って、わたしの自慢のいとこなのです!
生徒会長である兄さんのありがたいお話が終わったあとも、入学式は続く。正直、もう兄さんが見れたからこんな式どうでもいい。はやく兄さんに挨拶をしに行きたい。今日からわたしも兄さんと同じ学校に通うのだから!
長い入学式が終わり、教室にはいる。どんなひとがいるのかと教室を見渡すと、つっこみどころが多すぎてどうしたらいいかわからなくなった。
まず隣の席のひとの髪型がおかしい。これは毎日セットしているのだろうか。だとしたらセンスおかしい。あと恐ろしく目つきが悪いし、隣の席とはいえ関わりたくはない。もともと兄さん以外はわりとどうでもいいし、たいして関わるつもりはないけど。
「…う、うわー…」
思わず声にだしてしまうぐらいにドン引きしてしまった。なにこれわたしがおかしいの?
雰囲気だけではなく、リアルに浮いてるひとを見てしまって、急いで視線をそらした。あんなひとと目があっては困る。包帯ぐるぐるまきだし、なんだろう、エジプトあたりからの来賓?いやでも机あるし、うわあ……。
手枷みたいなものをつけてるひともいて、このクラス本格的におかしい。とりあえず、あの3人とは頼むから関わらず過ごせますように。
先生の眠い、もといありがたい説明やらなんやらを聞き、解散となってすぐ教室をでる。べつにあの濃いひとたちと関わりたくなくて大急ぎで去ったわけじゃないよ?わたしの兄さんが生徒会室で待っているので、急いでいるだけです。…誰に対して言い訳してるんだろう。
「生徒会室、どこ……」
今日入学してきたばかりのひとになんにもなしに生徒会室にこいとか兄さんも無茶を言う!なにかの試練か、兄さんに試されてるのか!?だとしたら頑張るしかない!
…なんて思いつつわからないものはわからない。偶然会った先生に生徒会室の場所を聞いた。廊下は走らない!と怒られてしまったため、限りなく走っているに近い早歩きで向かう。
扉をノックするとよく知らない声が聞こえたが、それに構わず大きな音をたてて扉をあけた。
「兄さん!会いたかったー!」
「よく来た、都子」
嬉しくて勢いよく飛びついたが、毎度のことながらしっかり受けとめてくれる。さっすが兄さん!
「秀吉、君には妹がいたのかい?」
「我の従妹よ」
「なるほどね」
すぐ近くで声がして、見ると月並みな感想で申し訳なくなるけど、すごくきれいなひとがいた。白くてウェーブがかった髪、女性より綺麗な顔、なんだか今日はすごいひとに会ってばかりだ。この学校に普通のひとはわたししかいないの?
「僕は竹中半兵衛と言う。よろしくね」
きれいなひと、もとい竹中先輩が、それこそふわりという表現がぴったりなくらい柔らかい微笑みをうかべる。こんなにきれいなひとに微笑まれて、顔が赤くならない女の子はいないだろう。存在するだけで犯罪なんじゃないの。ずるい。
「わ、純野都子です!よろしくおにぇ…っお願いします!!」
…穴があったら入りたいとは、まさにこのこと。緊張しすぎて、漫画かと自分でつっこみをいれたいぐらい華麗に噛んでしまった。兄さんも竹中先輩も笑っているし、絶対に今のわたしはゆでダコになっている。ううう、恥ずかしい…。
「可愛らしい従妹じゃないか、秀吉」
「我の自慢よ」
ぎゃーもうやめてー!恥ずかしくてしにそうだから!そんな思いでぎゅっと兄さんにしがみつく。頭をなでる手が優しくて安心する。
外からノックとともに「失礼します、秀吉様」という声が聞こえた。…秀吉"様"?疑問に思い、兄さんから離れ扉に視線を向ける。そこには、関わりたくないひとたちが勢揃いしていて、めまいがした。