「さ、さむ…寒すぎ…」

 外は雪で真っ白になっていた。寒さで思い通りに身体が動かない。雪さえなければもうすこしよかったのだろうが、もはや感覚がなくなる程度には足が冷えきっていた。
 だいたい、こんな日は仕事寮も休みにしていいと思う。牛車なんて乗れるほど良い身分ではないし、こんな寒いなか歩きたくない。
 しかしいくら文句を言っても行かなければならないことには変わりない。源信様の暖かいお茶が待っている!そう期待しつつ、感覚をほとんど失っている足を必死に動かす。

「おっ、名前やん!」
「あれ?弐号、安倍様に置いていかれたの?」
「そうなんや!あの鬼晴明がなー…ってちっがーう!」
「え、違うの?」
「弐号寮の様子をな、見にいっとったんや」

 こんな寒いなか、お疲れさま。ぱたぱた飛ぶ弐号を見て、ちょっとうらやましくなる。弐号は火そのものだから、こんな寒さ感じないだろう。ううん、人間っていうのはじつに不便な生き物だ!寒さにも暑さにも負けてしまう…。

「ずいぶん寒そうやな、名前」
「そりゃあね…」
「わいが暖めたろか?」
「源信様のお茶楽しみ!」
「って、無視かい!」

 やっぱり、こんな寒い日はひとと…といっても弐号はひとじゃないけど。だれかと一緒にいるほうが楽しい。いつも弐号は賑やかで面白くて楽しいのだけれど、この寒さだといっそう楽しく感じられるもの。寒いと人肌恋しくなる、みたいな感じなのだろうか。…すこしちがう?

「弐号は寒くないの?」
「わいはいつでもぽっかぽかやでー」

 うわあ憎たらしい!夏に言われたら壱号に蹴り飛ばしてもらうところだけれど、今はあいにく冬である。一生懸命動かしていた足を止め、雪を手に取り、ぎゅっと丸める。手が痛いけど、がまん!にこりと笑い、丸めた雪球を思いっきり憎たらしい鶏に投げつけた。

「へぶっ!!名前、何すんねん!」
「わたしと同じ寒さを味わえー!」

 手の痛みも忘れて、雪球をぽいぽい投げつける。さすが鶏なだけあって動きがはやく、あたったのは最初の1回だけだった。悔しい…!

「わ、わい、暴力反対やでーー!!」
「暴力じゃないよ!立派な遊びだよ、これ!」

 そうこうやっていたら遅刻し、安倍様に説教をくらったのは言うまでもない。


雪の日の過ごしかた / 130225

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