箱入り娘と、世話係。
放課後、急に担任に呼ばれて職員室に向かってみれば、何やら難しい顔をして待ち構えている先生がいた。
「俺に何か用っスか?」
「あぁ、大事な話がある。取り敢えず座ってくれ」
そう言って俺は隣の空いていた他のクラスの先生の椅子に座らされた。
「あの、俺これから部活なんで、できれば手短にお願いしたいんスけど…」
「それはお前次第だ、黄瀬」
「で、話って何スか?」
「実はな、お前に月島の世話係をしてもらいたい」
先生のその言葉を理解するのに、どれ程の時間が掛かっただろうか?
やっと理解できた俺の口から出た言葉は「は?」だった。
考えてもみてほしい。
どう考えたって変ではないだろうか?
普通、世話係というのは小さな子供のためにあるものだ。
それ以前に何で別に仲良くもない男の俺を月島さんの世話係に決めたのか。
「何で俺なんスか?」
「仲良さげに会話してたからな」
いやいやいや、待て待て待て。
あれのどこが!
そう思ったが、この雰囲気からして俺が頷くまで部活には行かせてくれないのだろう。
面倒くさいと思いながらも、しょうがなく頷いておいた。
「分かったっス」
「そうか!じゃあ、明日からよろしくな!」
ニッコリ今まで見たこともない笑みを見せた先生は俺の肩をポンポンと軽く叩いた。
…明日から学校が憂鬱になってきたっス。
120903