無知少女と、早弁。
英語の授業が終わった途端、クラスの皆の視線は月島さんへと向けられる。
当の月島さんはその視線に気づいていないのか、シレっとしながら静かに本を読んでいた。
誰も話さないため、教室内には沈黙が流れている。
ガタガタと風で窓が揺れる音や廊下にいる生徒の話し声が聞こえてくるだけで、何だかとっても居心地が悪い。
早く休み時間よ、終われ!
きっと誰しもが心の中でそう思っていることだろう。
実際、4時間目始業のチャイムが鳴ると何人もの人が小さくため息を吐いていた。
謎すぎる。
月島さんの全てが謎だ。
見た目からして、一般家庭の子供だとは到底思えない。
一体何者なのだろうか。
しばらくすると、先生が入ってきて4時間目が始まった。
先生は月島さんがいることに驚いていたが、嬉しそうな顔をして授業を開始した。
授業の途中、板書に飽きて横目で月島さんを見てみる。
と同時に俺は目を見開いた。
月島さんの机には丁寧に広げられたナフキンの上に可愛らしいお弁当が置いてあった。
手には箸を常備されていた。
月島さんは何の躊躇いもなく、お弁当の蓋を開ける。
すると、美味しそうな匂いが周りに広がった。
となれば、周りにいた人はまず気づくわけで、前の席の男子がお弁当を食べようとしている月島さんを見て凄い顔をしていた。
「月島、お腹が空いているのは分かるが今は授業中だ」
そうやって先生が注意するにも関わらず、「すいません。でも、お腹が空いたらご飯を食べなさいと常日頃から言われてますので」と言って普通に食べ始めた。
…女子が平然と早弁してるの、初めて見たっス。
120824