□■ となりの赤也くん/切原赤也



夏休みが開けて早々、いきなり先生が席替えをすると言い出した。

ガッツポーズをして喜ぶ人もいれば、「えーっ!!」とすごく嫌そうな顔をして落ち込む人もいる。

私はどちらでもない。

今の席に不満も満足もないからだ。

だけど、せっかく仲良くなったお隣さんと離れるのは寂しい。


「潮ちゃん、席替えだね」

「何辛気臭い顔してるの!!大丈夫だって、今日のあたしはついてるから!!」


そう言ってお隣さんの潮ちゃんはグッと親指を立ててウインクをして見せた。

何だかとっても頼もしい。


「そうだよね、大丈夫だよね」

「うん。大丈夫、大丈夫!!」


潮ちゃんはくじを引く順番が回ってきたため、教卓まで向かっていった。

くじが入った箱の前で両手をパンパンと叩き、神頼みをしているようだった。


「さっさと引け、工藤」

「はーい。よっしゃ、これだぁぁぁぁああああ!!」


勢いよく引き当てた四つ折りのくじを開いて、潮ちゃんは黒板を睨んだ。


「嘘でしょ…」


潮ちゃんはがっくりと肩を落とし、くじをゴミ箱に捨てて帰ってきた。

先生が「工藤はいい席を引いたな」と笑いながら、さっき潮ちゃんが引いたくじの場所に名前を書いた。

潮ちゃんの席は一番前の右から4番目。

その後左右の席は全て既に埋まっていた。


「…最悪」

「大丈夫だよ、潮ちゃん。潮ちゃんならあの席でも生きていけるよ」

「生きていけるってアンタ!!」


私は潮ちゃんに肩を勢いよく掴まれた。

まずいこと言っちゃったのかな?と心配するも、潮ちゃんは「面白いこと言うわね!」と笑い出した。


「次ー、○○くじ引きに来い」

「あ、ハイ」


ドキドキとやけに緊張している心臓を深呼吸をして落ち着かせる。

箱の中のすぐ上にあったくじを引き、それを開くとそこには13番と示されていた。

黒板を見て自分の次の席を確認してみれば、窓際から2列目の一番後ろの席だった。


「切原の隣か…。アイツが寝そうになったら力づくで起こしてやってくれ!!」


そう言って先生は私の肩をパンと叩いた。

先生、肩パンは痛いです。



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夏休みの席替えで隣になった赤也が気になってしょうがない夢主。
赤也は夢主の事を4月当初から気になっていた。
きっかけは小さなこと。
廊下でぶつかった時にノートを拾ってもらった。
その時、ふわりと笑った夢主を見て一目惚れ。
夢主は可愛い訳でなく、至ってそこらへんに居そうな平凡な子。
ふわりと柔らかく笑うと可愛い。
が、滅多に笑わない。
隣になったのをきっかけに今まで以上に話すようになり、夢主は何とか告白しようと頑張るが、結局のところ断念してしまう。
最後はくっついてハッピーエンド。




2013/02/22 (22:26)