初めまして、こんにちは
初めて会った時。重なった視線絡まった視線。人の眼が怖いなんて初めてだった。
思わず紹介してくれた遊佐くんの後ろに隠れてた。遊佐くんは苦笑して
「怖がらせんといてよ」
言われた相手は意外という顔をして
「俺、女の子には優しいつもりなんだけどねぇ」
なんだか申し訳なくなって、少しずつ、遊佐くんの背後から出た。でも目が合わせられなくて俯いて。
「俺そんなに怖い?」
言われた声はずっとずっと優しくて、恐る恐る顔を持ち上げてみた。横で立っている遊佐くんを覗きみれば、楽しそうに笑っていた。
「怖く、ないです。すみません…」
顔をもう一回ちゃんと合わせれば、今度は怖いと思わなかった。それでもじっと見つめてくる目は真っ直ぐすぎて、ほんの少しの警戒を残してしまった。
「や、謝られてもね」
「は、はい」
そこで一人楽しそうに笑っていた遊佐くんはじゃあ、と手を上げた。なぜだか二人きりにされて、なぜだか二人でご飯を食べに。なんで?
「遊佐くんいないと不安?」
「そんなこと、ないです。鳥海、さんこそ、すみません」
「なんでぇ?」
「私と…二人って、楽しくないんじゃないかって」
鳥海さんが少し目を見開いて、意外そうな顔をした。だから、警戒を少し解いてみた。
「私、は、構わないんです…」
ははっ、と笑われた。初めての笑顔。最初の視線の強さはすっかり影を潜めてた。
「なーんだ。じゃあ気にしなくていいじゃん」
「え、あ…はい」
「この後予定あるの?」
「ない、です」
「一人暮らし?」
「はい…」
「彼氏いるの?」
「え?あ、の!や、え?い、いないです」
予想していなかった質問に思い切り動揺してしまった。声を立てて笑う鳥海さん。自分の反応を振り返って、自分でも笑える。
「そっかー」
「鳥海さん?」
「遊佐くんとの関係は?」
「お友達、です」
「そっかー」
「鳥海、さん?」
まぁ食べなよ、なんて促されて運ばれてきていた料理に口をつける。猫舌の自分が平気で食べれるぐらいには冷めていた。
「奈々子ちゃん」
「んむぅ?は、はい!」
「俺もまずは友達にしてよー」
まず、は?握っていたスプーンを落としそうになって、ギリギリで指に力を入れ直す。
「なんだかんだで奈々子ちゃん手強そうだしぃ?」
勢いで肯定の返事をしていた。
fin
- 141 -