ベストスポット


後ろから、殺気?…なわけないだろ。後ろにいるのは拓篤のはずだし。これが見ず知らずの人だったりしたら殺気の場合だってあるだろうけど。とりあえず安心して、台本読むことに集中しないと。

「きゃっ!た、たたた、拓篤?!」
「どうかした?」

どうしたもなにも、首をいきなり触られたら普通ビックリするでしょう!しかも両手で両サイド!え?やっぱり殺気だった?命狙われてる?

「台本、読まないの?」
「読むっ!」

でも、だからって!肩に顎乗せるとかいう、不意打ちで可愛いことしないで!心臓に悪影響だから!

「奈々子、そんなに俺が気になる?」
「知らない!」

首触る手が片手になったのは嬉しいけど、なんか触り方やらしい。オマケに、指でうなじの筋を一本真っ直ぐ引くからくすぐったいし!

「拓、離れて!」
「いや。つか、無理?」
「なにいっっ」

スルリと滑る拓篤の手に、思わず言葉を飲み込んでしまった。

「奈々子は感じやすいね」
「誰のせいっ?」
「俺?」
「そう!拓篤がずっと首触ってくるから!」
「他の男に慣らされるよりマシでしょうに」

それはそうで、そうなんですけど、けども!って、

「ひゃっ!こら、拓篤!舐ーめーるーなー!」
「舐めなきゃいいわけ?」
「口づけもダメ!」

いつもより心臓に重責務!人のダメ出しも馬の耳に念仏、豚に真珠、猫に小判。それどころか、私の反応がそれぞれの動物に餌与えてる?!全然、拓篤くん止める気配見せないんですけど!

「拓篤!」
「大人しく台本読むのと、強制的に俺に、口閉じられるのと、どっち?」

なんていわれたら、今は前者ですけどね。明後日までにはしっかり読まないとなんだって!

「奈々子の首いいよな」

なんでそこまでうっとりしてるのー?!いや、知ってるけど、知ってたけど!知るしかなかったけど!

「拓篤の首フェチ!」
「大人しく台本読むんじゃないの?」

反論しようとして、逆に息を飲んだ。普通、首を噛む?噛むの?首を?甘噛みだけと。

「甘い」
「そんなわけあるか!」
「はっ、はは…クク…。奈々子、面白い」

噛んだらしきところを、今度はただ口づけてくる。

「面白い、って、言われても、あんまり嬉しくない」
「そう?」

ワザと音を立てて口づけてから、拓篤が正面に回ってくる。

「じゃ、可愛い」
「なっ!?」
「可愛い」

正面からキスされて。怒るに怒れない。



fin


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