ほんわか
仕方ないからプリンは半分こ。自分のはカップに入ったまま、裕行の分を小皿に移す。
「どーぞ。しっかり味わいやがれぇい!」
「どーも。どこの悪代官のセリフだよ」
一口。あっまーい。
「んふ、んふふふぅ」
「キモい。んふ、だけならまだマシ。」
「キモい禁句」
「じゃあキモチワルイ」
「キモい、より、そう言われたほうが気持ち悪い感溢れるよね。なんでだろ?」
「知らねー」
行儀悪く、スプーンをくわえたまま、そしてプリンを凝視したまま考える。考える…ヒョイと私のじゃないスプーンが伸びてきて。
「うめぇ」
「あああぁぁぁ!私の食べたぁ!」
「見てるだけで食わないんだろ?」
裕行のプリンにスプーンを伸ばして一口。
「奈々子!お前な!」
「お互い様ですー!お互い様!」
ぐぬっと裕行が唸った。反論できなくて悔しいのか。でも裕行のせいだしなー。
「つか半分にわけっから悪いんじゃね?」
「んふ?」
プリンを一口食べながら喋ろうとしたら、さっきの笑いみたいになった。これは確かにキモいわ、自分。そんな私を放置で、裕行が折角わけたプリンを一つに戻した。それを持ってカーペットの方に向かっていくから、慌てて追いかける。
「奈々子、座れ。お座り」
「私は犬ですか!」
なんていいながら、ついつい素直に従ってしまうあたり本当に犬なのかもしれない。
カーペットの上に座り込む。
「近く来いって。腕伸ばすの面倒だろ」
「何がしたいのか、さっぱりなんだけど」
「いーから」
仕方ないから、膝を立てて座った裕行の足の間、思いっきり真っ正面に座る。なのに裕行は大して慌てることはない。人がこんな目一杯接近したのに。
「おら」
ぶっきらぼうな言葉で差し出されたスプーン。乗ってるのはもちろんプリン。迷いなく、食べますよ?もちろん。
「ん」
また言葉少なに差し出されるのを食べる。
「もしかして、裕行照れてます?」
「なっ!?んなことねぇよ!バカ奈々子!」
「なんで私がバカになるのよ!?」
「うるせぇっての!いいから、おら」
また差し出される、というより突き付けられるプリン。すでに反射反応なのか、口が素直に開く。プリンの魔法?
「うまい?」
「え?うん。普通に」
「ちげぇっての!」
それじゃあどういうこと?聞くより、顔に出ていたみたいで。
「だから、俺が食わしてやってんだからうまいか聞いてんだよ!」
裕行は爆弾みたいだ。
fin
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